親が認知症になると、預貯金は「口座凍結」、実家は「売却不可」に陥ります。親のお金を親のために使えず、子どもが多額の介護費用を立て替えるケースは後を絶ちません。本記事では、西川満則氏、福村雄一氏、大城京子氏、小島秀樹氏共著の書籍『終活の落とし穴』(日本経済新聞出版)より、「家族だから」が通用しない銀行のシビアなルールと、手遅れにならないための回避策を解説します。
親と一緒に銀行へ行ったら、その場で「口座凍結」された…。「本人連れ」でもアウト、親が認知症になった瞬間の“銀行の対応” (※写真はイメージです/PIXTA)

施設費用が払えないのに「実家が売れない」

先ほどは、最も身近な例として預貯金を挙げました。では不動産はどうでしょうか。特に長年暮らしている自宅の場合、家族の中では、その土地や家は「家族みんなのもの」という認識かもしれません。でも実際は、その土地家屋には名義があり、売却には当然、持ち主の意思表示が必要です。

 

例えば、父名義の実家を売却するとします。手続きの際には当然、本人が売却する意思を持っているかどうかが見られています。その会話の中で、本人が不動産のことを認識していない、マンションなのに戸建ての話をしている、そもそも自分の持ち物かどうかが分かっていない、といったことが明らかになったらどうでしょう。「本人の意思が確認できない」となり、売却はできません。いくら「施設入居のために売るのです。売却は本人のためです」などとその場で主張したとしても、です。

 

本人の認知機能が衰えているので、ほかの家族が代理で売却の意思表示をする、といったことは当然、許されません。

 

認知症の親を持つ子が陥る、不動産売却の“順序”の落とし穴

高齢の親の自宅を売却するのは、「施設入居のため」など、先立つものが必要になるという理由が多いと推測します。しかし前述のように、財産はあるのに現金化できないケースも起きています。

 

さらに深刻な例もあります。通常は、施設入居を考えているので自宅を売却し、その資金で施設に入るという順番です。しかし、「すでに施設に入ってしまっているが、予想外に費用がかかってしまった。そこで自宅売却を検討しはじめる」というケースです。こうした依頼は、実は多いのです。

 

しかし入居から年月を経ての売却となると、そのときには本人の判断力が低下していることが多いのです。その結果、お金の必要性は高いのにもかかわらず、売却ができないということが起きています。このように、順番を逆にして
しまうことが、落とし穴だと思います。

 

 

西川 満則 

福村 雄一 

大城 京子 

小島 秀樹