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統計から見る「老後の満足度」を左右する真の要因
金融広報中央委員会『令和5年(2023年) 家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]』によると、「経済的な豊かさを実感している(実感している、ある程度実感している、の合計)」と回答したのは39.4%。「心の豊かさを実感している」は55.7%でした。
また年収別に見ていくと、収入が高くなるほど経済的な豊かさも、心の豊かさも感じている割合が増えていきます。経済的な豊かさと精神的な豊かさは深く関係しつつも、絶対ではないことがわかります。
また内閣府の『高齢者の経済生活に関する調査(令和3年度)』によると、高齢者が日々の生活で満足感を得る要因は、単に「所得の多さ」だけではありません。
同調査では、家計にゆとりがある層であっても、社会的な孤立や役割の喪失が満足度を著しく下げることが示されています。一方で、たとえ収入が以前より減ったとしても、「自主的に社会と関わっている」「人から感謝される役割がある」と感じている層ほど、主観的な幸福度が高い傾向にあります。
佐藤さんのケースでいえば、病という挫折が、皮肉にも「高年収・高地位」という執着を捨てるスイッチになりました。かつては労働を「対価を得るための苦役」として捉えていた側面もありましたが、一度収入が途絶えたことで、働くことの価値を「社会に必要とされる実感」へと再定義できたのです。
老後の豊かさの基準は人それぞれですが、必ずしも「貯蓄額」だけが支えになるとは限りません。現役時代の役職や年収にこだわらず、今の自分に合ったペースで誰かの役に立つ――。そうした「社会との接点」を持ち続けることが、結果として精神的な安定や、日々の暮らしの充実感に繋がるひとつの形と言えるのかもしれません。