かつては美徳とされた親への仕送りが、いつしか現役世代の生活を圧迫し、最終的には双方の生活が立ち行かなくなるケースが増えています。たとえば就職氷河期を経験した世代が50代に差し掛かり、自身の老後資金への不安と親の介護・生活支援の板挟みにあう――。自身の困窮から親への仕送りを断念せざるを得なくなった、ある男性のケースを通して、現代の高齢者世帯が直面する経済的困窮を紐解いていきます。
お母さん、ごめん。もう限界なんだ…51歳ひとり息子の懺悔。〈家賃月3万円〉の団地で暮らす75歳母、〈月3万円〉の仕送りが途絶え、寒さに震える極寒の夜 (※写真はイメージです/PIXTA)

高齢者世帯を襲う「物価高」と「低年金」のダブルパンチ

厚生労働省「2024年(令和6年)国民生活基礎調査」によると、高齢者世帯のうち「生活が苦しい」と回答した世帯は55.8%にのぼりました。また公的年金・恩給が総所得の100%を占める世帯が43.4%存在しており、年金収入のみに頼る高齢世帯が物価高騰の影響をダイレクトに受けている実態が明らかになっています。

 

年金が月8万円ほどだというよし子さん。実際にそのような水準の高齢者はどれほどいるのでしょうか。厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金受給者の平均受取額は、月15万289円。そのうち月8万円未満の受給者は約200万人にのぼり、全体の1割強を占めます。さらに令和7年度、国民年金の満額は月6万9308円です。国民年金受給者およそ3300万人も含めると、約3500万人が年金月8万円未満の層に該当すると考えられます。

 

ここで、よし子さんのような独居高齢者の家計がいかに厳しいか、総務省「家計調査 家計収支編 2024年」から、高齢単身無職世帯の平均的な収支を見てみましょう。

 

実収入(年金など):134,116円

可処分所得(税・社保引き後):121,469円

消費支出(食費・住居費など):149,286円

不足分(赤字):▲27,817円

 

平均的な年金受給額がある世帯であっても、毎月3万円弱が不足するという現実。よし子さんのように月収が8万円(手取り約7万円強)というケースでは、平均的な支出水準を維持しようとすれば、毎月8万円以上の赤字が出る計算になります。直人さんからの「3万円の仕送り」が、生存のためにいかに重要であったかがわかります。

 

しかし、支援する側の現役世代もまた、実質賃金の低下と物価高に苦しんでいます。特に就職氷河期世代は自身の老後資金への不安も大きく、親への援助が「親子共倒れ」を招くリスクは看過できません。限界を感じた際には、世帯分離による生活保護の検討や、自治体の相談窓口への連絡など、早急に公的な支援制度へ繋げることが、有力な選択肢となるでしょう。