長年勤め上げた会社を定年退職し、ようやく手に入れた自由な時間。現役時代、必死に家族を支えてきた自負がある男性にとって、老後はこれまでの功労をねぎらわれる穏やかな日々になると考えているでしょう。しかし、セカンドライフが平穏になるとは限りません。ある男性の事例を通じ、老後の生活設計における死角についてみていきます。
妻「平日は実家に泊まるので、家事は自分でやってね」に「まかせておけ!」と言ったものの…年金20万円・65歳リタイア夫の想定外【定年後に待ち受ける親の介護問題】 (※写真はイメージです/PIXTA)

「老老介護」が招く定年後の想定外

厚生労働省「2022年 国民生活基礎調査」によると、要介護者と同居している主な介護者のうち、65歳以上のいわゆる「老老介護」の割合は63.5%に達しています。また、性別で見ると女性が介護を担うケースが多く、加藤さんのように妻が実家の介護を担うために不在となる、あるいは介護離脱せざるを得ない状況は、どの世帯でも起こり得る現実です。

 

【老老介護の実情(要介護者が65歳以上の場合)】

■要介護者が65歳以上

介護者が60歳以上…77.2%

介護者が70歳以上…63.5%

介護者が75歳以上…32.8%

■要介護者が75歳以上

介護者が60歳以上…75.8%

介護者が70歳以上…61.2%

介護者が75歳以上…35.7%

 

さらに、国立社会保障・人口問題研究所「第7回全国家庭動向調査(2024年発表)」では、夫婦の家事分担は妻80.6%に対して夫は19.4%と、妻側に大きく偏っている実態が示されています。妻の年齢別にみると、妻の家事負担が80%を超えるのは40代で7割、50代では8割弱にのぼります。このような状況下、夫がリタイアしたからといって、負担がすぐに半々になることは稀であるといえるでしょう。

 

【40代、50代の妻の家事分担割合の分布】

■40~49歳

40%未満…2.6%

40~60%未満…7.5%

60~80%未満…19.1%

80~90%未満…19.0%

90~100%未満…37.8%

100%…14.0%

■50~59歳未満

40%未満…3.3%

40~60%未満…5.0%

60~80%未満…14.2%

80~90%未満…15.3%

90~100%未満…44.9%

100%…17.3%

 

夫が「家事は妻がやるもの」という前提でリタイア生活を設計していると、妻に万が一のことがあった際や、今回のように介護で不在となった際、生活の質が著しく低下します。

 

長寿化に伴い、「親の介護問題」が定年後にずれ込むケースは増えています。また、パートナー自身の介護も他人事ではありません。いざ直面した際、お金だけで解決することは難しく、肉体的・精神的に大きな負担が生じます。リタイア後は経済的な準備だけでなく、「生活スキルを磨いておくこと」が、夫婦の老後を充実させる鍵となるでしょう。