社長の「一番売った奴になんでも買ってやる」という鶴の一声で始まった、社内販売レース。18歳の新入社員だったのちにわかさ生活の創業者となる⻆谷建耀知氏は、「スーツが欲しい」一心でトップを目指しますが、ライバルは経験豊富な先輩たち。正攻法の売り込みでは勝ち目がないと悟った彼が編み出したのは、無謀とも言える作戦でした。『誰でもできる! 結果に繋がる超・マーケティング思考 すべての答えは個客の中にある』(アスコム)より、同氏の若き日の実話から、現在のビジネスにも通じる「商売の原点」を紐解きます。
社長「今月、烏龍茶をいちばん売った社員になんでも買ってやる」…昭和の企業、まだ“謎の健康茶”だった時代。スーツが欲しい基本給18万円・入社2ヵ月の18歳新人が成績トップで〈給料78万円〉を稼いだワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

買ってもらうためにいちばん話が早い手段

烏龍茶はお客さんが欲しがってくれた、とは言っても10人中10人が買ってくれたわけではありません。むしろ「興味はあるけど、まぁ今回はいらないかな」という人の方が多いものです。要は「欲しい」と思ってもらえていない状態です。なぜかというと確信がないから。なぜ確信が持てないかというと「体験したことがない」からです。それであれば「体験してもらう」のが、いちばん話が早いのです。

 

当時から「体験者の声」、買ってくれたお客さんの感想を聞く、ということはありました。しかし「買っていない状態で、お試しができる」という文化は会社にはなかったため店長に相談をしたところ「商品はお客さんにタダであげたり、お試しをさせるのはダメ」と言われたのですが、「じゃあ、僕が自分で買って、それを好きなようにするのはいいですか?」と聞くと「それならいいよ」とOKに。

 

安く買える、に関しては「仮に12ヵ月分一気に買ってくれる、という人がいたら、少し安くしていいか?」ということを相談したところ「12ヵ月分なんて、そんなの買ってくれるお客さんいるか?」という話になりましたが、色々と計算をして「1ヵ月分2000円の烏龍茶、12ヵ月分セットで買ってくれるなら、2万4000円のところを、2万円で。4000円、2ヵ月分おトク」という売り方をしてもいい、とOKを貰えました。

 

この「お試し品」や「セット割」は、今でこそ当たり前のようになっている方法ですが、当時は見聞きをしないものでした。翌日から、わたしは「お茶汲み」をはじめました。掃除をして、受付をして、お茶を出す。これだけを聞くと、売上1位を狙っている行動には見えないかもしれませんが、わたしにとっては本気で考え尽くした結果の、ベストだと思う行動でした。

 

あたたかい烏龍茶、冷たい烏龍茶をたくさん用意し、お客さんたちに飲んでもらう。そして感想を聞く。さらに、わたしのファンになってくれている人たちにも相談して「じゃあ、私が烏龍茶の感想を話してあげる」と協力してもらう。これが売れました。残り10日間ほどの間で「烏龍茶12ヵ月セット」は次々に売れていきました。

 

12ヵ月分を買ってもらうと、荷物にもなるので営業が終わった後に商品をお客さんの家まで届けてもいました。すると、相手から感謝もされ、時にはその場でお茶をご馳走になったり、お店では聞けなかった生活の話、悩みの話なども聞けました。そしてその話が、そのまま翌日の話のネタにもなりました。当然、プライベートなことやお客さんとの信頼を崩すようなことは話さないようにしました。

 

すると、数珠繋ぎのように「ウチも」、「じゃあウチも」とセットを買ってくれる人が増え始め、最終的には2位に圧倒的な差をつけて、わたしは烏龍茶販売数1位になっていました。結果、わたしは78万円のお給料とスーツを貰うことができたのです。この成功の要因は、「仕組み」が作れたからです。