「子どものために」と選んだ郊外のマイホーム。豊かな自然に囲まれた暮らしは、家族にとって最良の選択だったはずです。 しかし、子どもが成長するなかで、その住まいが常にベストであり続けるとは限りません。ある50代男性の事例を通じ、現代における住まい選びと、進学に伴う家計負担の現実について見ていきます。
月収55万円・52歳サラリーマン、通勤往復3時間に耐えること18年、高3息子の「まさかのひと言」に撃沈の理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

「遠距離通勤」が家庭と家計に与える影響と、ひとり暮らしの経済的現実

子育て環境を優先して郊外に居を構えたものの、子どもの成長と共に「通勤・通学の負担」が家族の価値観のズレとして表面化するケースは少なくありません。

 

まず、日本の通勤事情を統計から見てみましょう。総務省統計局『令和3年社会生活基本調査』によると、神奈川県、埼玉県、千葉県などの東京近郊における通勤・通学時間の平均(往復)は約1時間30分前後となっています。田中さんの「往復3時間」は、その平均の倍に相当し、都市部の中でも特に負担が重い部類に入ります。

 

1位:神奈川県(平均100分=1時間40分)

2位:千葉県(平均95分=1時間35分)

2位:東京都(平均95分=1時間35分)

4位:埼玉県(平均94分=1時間34分)

 

こうした長距離通勤が心身に与える影響については、多くの研究で指摘されています。国土交通省『国土交通白書』等の資料においても、通勤時間の短縮がワークライフバランスの向上に不可欠であることが強調されています。

 

また、翔太さんが希望する「大学進学に伴うひとり暮らし」は、家計に大きなインパクトを与えます。独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)『令和4年度学生生活調査』によると、東京圏において、私大・自宅生の学生生活費は、学費と生活費合わせて186万2,900円です。 一方でアパート等に居住する場合は270万9,100円。自宅生から下宿生になることで、年間で約85万円、4年間で約340万円の追加費用が発生する計算になります。

 

田中さんの世帯年収であれば、決して不可能な金額ではないかもしれません。しかし、自身の定年が視野に入る50代において、住宅ローンの残債を抱えながら、年間100万円単位の仕送りを捻出することは、老後資金の形成に大きな影響を及ぼします。

 

都心への中・長距離通勤を前提に、郊外にマイホームを持つという選択。その子どもが、親と同じ価値観を持っているとは限りません。田中さんの事例のように、プラスアルファの費用を覚悟しなければならないケースも、決して珍しくはないのです。