新NISA制度がスタートしてから2年が経過し、2026年を迎えた現在。かつては「貯蓄から投資へ」というスローガンに懐疑的だった層も、今やスマートフォンで自身の評価損益を確認することが日常の一部となりました。日本人の資産形成において、NISAはもはや特別なものではありません。しかし、制度を徹底的に使いこなす人とそうでない人の間では、目に見えない格差が生まれつつあるようです。
「このままじゃ老後は詰む…」月収32万円・44歳会社員、5年間1円も増えなかった〈貯金500万円〉が〈資産1,000万円超〉に変わった現実 (※写真はイメージです/PIXTA)

預金残高がずっと変わらない恐怖から脱却

「銀行口座に500万円。独身ならそこまで焦る数字ではないかもしれません。でも5年前から1円も増えてないんです。物価はどんどん上がるのに、自分の資産だけが止まっている。このままでは老後は詰んでしまうという焦りがありました」

 

都内の精密機器メーカーに勤務する佐藤健一さん(44歳・仮名)は、自身の資産管理について淡々と振り返ります。佐藤さんの手取り月収は約32万円。銀行にある500万円の貯蓄は、コツコツ積み上げたものではなく、数年前に満期を迎えた積立型保険の解約返戻金がそのまま残っていたものでした。

 

日々の生活費で給料を使い切ってしまう現在の生活スタイルでは、この500万円に上乗せすることは難しく、ただ銀行に置いておくだけでは「目減りしていく資産」に他なりませんでした。そこで佐藤さんが決断したのが、2024年の新NISA開始に合わせた「資産の置き場所の変更」です。

 

「銀行に寝かせていても金利はほぼゼロ。それなら、この500万円をNISAの成長投資枠を使って市場に移そうと考えました。毎月の給料から10万円を積み立てつつ、銀行の500万円から毎年240万円ずつを2年かけてNISA口座へ移し替えたんです」

 

佐藤さんが選んだのは、世界中の株式に分散投資する投資信託でした。成長投資枠であっても個別株の売買はせず、インデックスファンドの一括購入に充てたのです。この「元手の移動」と「毎月の積み立て」の結果、2年間で合計720万円の元本をNISAに投入しました。

 

「運が良かったのは、2024年から2025年にかけての歴史的な世界株高です。米国株を中心に相場が大きく上昇し、円安の影響もあって、評価額は1,000万円を超えました」

 

もちろん、相場の変動による一時的な利益であることは理解している、と佐藤さんはいいます。しかし、ただ銀行に預けていたときとは比較にならないスピードで資産が膨らんだ事実は、大きな心理的余裕をもたらしました。

 

「もし明日会社が倒産しても、1,000万円あれば当面は食いつなげる。そう思えるだけで、職場でのストレスの感じ方まで変わりました。ただ貯め込むのではなく、制度を使って資産の『置き場所』を変える。それが40代の自分にとって、最も現実的な生存戦略だったと思っています」