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家族に引け目を感じる要介護者と、ひっ迫する施設介護の実情
内閣府閣府『高齢者の健康に関する調査』によると、「将来、排泄等の介護が必要な状態になった時、誰に介護を頼みたいか」という問いに対して、半数近くが「ヘルパーなど介護サービスの人」と回答しています。 多くの高齢者や要介護者が「自宅で過ごしたい」と思いつつも、家族への思いやりから老人ホーム等の施設への入居を希望するケースが多いことが読み取れます。
一方で、高齢化に伴い施設の人手不足は深刻化しています。 厚生労働省によると、介護職員の必要数は2026年に約240万人、2040年には約272万人になると推計されています。 対して実際の介護職員数は、2023年時点で212.6万人。 前年から3万人ほど減少しました。着実に増えていく要介護者に対して、絶対的に人手が足りていないのです。
介護職員の有効求人倍率は他職種に比べて依然として高く、現場は常に限界に近い状態で運営されています。 このような状況下では、誤嚥事故の防止や介助時間の短縮を目的として、調理の手間がかからず介助も容易な「刻み食」や「ミキサー食」が一律に提供される傾向にあるのは、致し方ない側面もあるでしょう。
しかし由美子さんの父のように、食の楽しみを奪われることで急速に意欲を失い、身体機能が低下するケースは少なくありません。
介護を社会で支えるという理念のもと、施設入居は有効な選択肢ですが、それは家族の役割を終えることではありません。 入居者本人は、施設側に不満があってもなかなか意見しづらいものです。 入居後も食の形態や生活の質について、施設側と対等に話し合っていくこと、また家族に合った施設かどうかを見極め続けることは、非常に重要なことだといえます。
[参考資料]
厚生労働省 第1回社会保障審議会福祉部会 福祉人材確保専門委員会 資料5