親にとって子どもの成長が喜びであるように、子にとっても親の長寿は本来、何よりの嬉しいこと。しかし、現代日本において「長生き」は、時として家計を圧迫する切実なリスクになることも。ある親子のケースをみていきます。
お母さん、長生きしてね。「年金月14万円」老人ホーム入居の82歳母へ、親孝行の54歳息子。実は陰でそっと泣いていたワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

インフレ率に追いつかない年金改定の実態

佐藤さんのような悲鳴は、決して特殊な事例ではありません。背景にあるのは、急激な物価上昇と、それに追いつかない年金支給額のギャップです。

 

総務省『2020年基準 消費者物価指数』を見ると、2023年(令和5年)の生鮮食品を除く総合指数は前年比3.0%の上昇となりました。特に食料品は8.1%上昇、電気・ガス・水道などの光熱費も高騰し、老人ホームの運営コストにも多大なる影響を与えていることがデータから確認できます。老人ホームなどの介護施設も事業として運営されている以上、光熱費や食材費の高騰分を利用者に転嫁せざるを得ません。

 

 

一方で、入居者の収入源である「公的年金」はどうでしょうか。厚生労働省によると、2025年度(令和7年度)の年金額は、前年度から1.9%の引き上げとなりました。一見すると増えているように見えますが、同年度のマクロ経済スライドによる調整が入り、実質的な物価上昇率には追いついていません。つまり、物価が上がった分ほどには年金は増えていないのです。

 

この「物価高>年金増」という図式が続く限り、施設費用と年金の差額は広がる一方です。その「差額」を埋めるのは、佐藤さんのような現役世代の子どもたちになります。

 

親の安心・安全をお金で買う時代において、その「価格」が急騰している今、親子共倒れを防ぐための資金計画や、早めの家族会議(いくらまでなら出せるか、限界が来たらどうするか)が、これまで以上に重要になってきているといえるでしょう。

 

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