物価の高騰が続くなか、賃貸マンションの更新時期を迎えた人々から悲鳴が上がっています。都心部を中心に家賃相場は上昇の一途をたどり、給料は上がらないのに固定費だけが増えていく現実に、多くの家庭が頭を抱えています。ある40代会社員のケースをみていきます。
「家賃3万円上げます」「えっ、ムリ!」…月収38万円・42歳サラリーマン、都落ち寸前も「逆に月5万円得した」理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

「家賃増額、払えません」都心マンション暮らしを襲った突然の通告

「最初は目を疑いました。ただの事務連絡だと思っていましたが、まさかあんな金額が書かれているなんて」

 

そう語るのは、都内のIT関連企業に勤める田中健太さん(42歳・仮名)です。田中さんは妻(39歳)と小学4年生になる娘の3人暮らし。3年前、通勤の利便性を最優先し、都内ターミナル駅から徒歩10分ほどの3LDKマンションを借りました。当時の家賃は管理費込みで月19万円。田中さんの月収は手取りで約38万円ですが、妻のパート収入と合わせれば何とかやり繰りできる計算でした。

 

「都心で19万円は安くないですが、娘の塾や私の通勤時間を考えると、時間を金で買うつもりで決断したんです。でも、今回の更新通知には『次回の契約から賃料を22万円に改定します』とありました。一気に3万円アップです」

 

月収38万円の家庭にとって、3万円の増額は死活問題です。食費を削るか、娘の習い事を辞めさせるか。田中さんはすぐに管理会社へ電話をかけ、交渉を試みました。

 

「『周辺相場が上がっている。同じマンションの同じような間取りの部屋は、すでに3万円高くなっている』と、交渉の余地はない、嫌なら退去してくれという冷たい対応で……。妻とも話し合いましたが、これ以上固定費が上がるのは無理だという結論に至りました」

 

こうして田中さん一家は、追われるようにして次の住まいを探すことになりました。しかし、不動産ポータルサイトを開いても、条件に合う物件は以前よりも遥かに高騰し、月22万円でも安いといえる水準……現在住んでいるエリアにこだわれば、今よりも狭く、古い物件しか選べません。

 

「もう都落ちするしかないのか、と妻と暗い顔をしていました。そんな時、ふと立ち寄った不動産屋の担当者が、地図を見ながら、違うエリアの物件を紹介してくれたんです」

 

担当者が提案したのは、ターミナル駅から電車でわずか数分ですが、各駅停車しか止まらない駅でした。ターミナル駅に近い反面、電車を利用する利便性は多少劣ります。しかし家賃相場はガクンと下がるというのです。

 

「正直、最初は抵抗がありました。各駅しか止まらないとか、駅前が地味だとか、不便になるイメージしかなかったんです。でも、実際に内見に行ってみて驚きました」

 

田中さんが案内されたのは、該当駅から徒歩7分の3LDK。築年数は前のマンションより新しく、広さは少し余裕があり、商店街が近く買い物も便利そうでした。そして何より驚いたのが、その家賃です。

 

「管理費込みで17万円でした。以前の家賃が19万円ですから、なんと2万円も安くなるんです。更新後の22万円と比べたら、月5万円の差ですよ。計算機を叩きながら、妻と顔を見合わせました。『むしろ得してない?』って」

 

今住んでいるターミナル駅へは、自転車でも行ける距離です。通勤時間は以前とほぼ変わらず、生活費は大幅に圧縮されました。

 

「結果的に駅を少し変えただけで、生活の質を落とすことなく貯金までできるようになりました。あのとき、意地を張ってエリアにこだわらなくてよかったです」