親世帯がリフォーム費用を負担し、子世帯の住居費を浮かせ、孫の教育費へ……一見すると、資産のある親から子への理想的な援助に見えます。しかし、この「親の全額負担」こそが、二世帯同居をあっけなく崩壊させる最大の要因になり得るといいます。ある親子のケースをみていきましょう。
「年金月28万円・貯蓄6,000万円」70歳夫婦、息子のために「2,500万円」全額負担で二世帯リフォームも…わずか1年で同居解消の「皮肉な理由」 (※写真はイメージです/PIXTA)

子・孫への住宅支援……ハードへの投資は慎重になるべき

佐藤さんのケースを、感情論ではなく「資産運用の失敗事例」としてみた場合、問題は投じた2,500万円が不動産価値としてほとんど還元されない点にあります。

 

一般社団法人住宅生産団体連合会『2023年度 戸建住宅注文主実態調査』によると、戸建注文住宅の91.8%が「(一般的な)戸建注文住宅」。4.7%が「同居型二世帯住宅」、2.1%が「完全分離型二世帯住宅」でした。二世帯住宅の需要は限定的といえるでしょう。

 

一般的な戸建てを探している層にとって、キッチンや浴室が2つある家は“無駄に維持費がかかる物件”でしかありません。将来的に売却する際、更地にするための解体費用分だけ土地値から割り引かれるリスクさえあります。つまり、佐藤さんは極めて流動性の低い資産を作るために、2,500万円もの老後資金を消失させてしまったことになるのです。

 

このような事情を鑑みると、長男家族への援助として、ハード(建物)にお金を投じるのはもっと慎重になるべきでした。たとえば息子家族に対して「近居のための支援」を行う。年110万円の家賃補助を3年間続けたとしても総額は330万円。もし同居(近居)がうまくいかなければ、その時点で支援を打ち切ればよく、ダメージは限定的です。

 

また、相続税対策として二世帯住宅を建てる(小規模宅地等の特例の活用)という手法もよく語られますが、これは「最後まで同居が継続すること」が大前提です。今回のように別居してしまえば、特例の要件を満たさなくなる可能性が高く、メリットすら享受できません。

 

家族といえど、暮らしてみなければ分からないことは山ほどあります。いきなり「リフォーム&同居」ではなく、まずは「賃貸」などで様子を見る、というのもひとつの選択肢。慎重な一歩こそが、大切な老後資産を減らさないための最大の防御策となるでしょう。