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40歳長男「無理して一緒に住むことないよ」
郊外の住宅街に50坪の戸建てを構える佐藤隆司さん(70歳・仮名)は、現役時代に築いた6,000万円の貯蓄と、夫婦で月28万円の年金により、余裕のある生活を送っていました。そんな佐藤さんが「人生最大の投資ミス」と悔やむのが、長男家族との同居のために行った大規模リフォームです。
きっかけは、長男・健一さん(40歳・仮名)からの「マンションが手狭になった」という相談でした。孫の顔を毎日見たい佐藤さんは、自宅を二世帯住宅に改装することを提案。費用2,500万円は、佐藤さんが全額キャッシュで支払いました。
「息子たちには住宅ローンを背負わせたくなかったんです。『家賃が浮いた分は、孫のために使いなさい』と。それが親心だと思っていましたし、息子も『ありがとう、親孝行するよ』と言ってくれていました」
リフォームは順調に進み、1階を親世帯、2階を子世帯とする分離型の二世帯住宅が完成。しかし、同居開始からわずか数週間で、佐藤さんは「決定的な違和感」を覚えることになります。それは、息子夫婦との話し合いの場面でした。 生活リズムの違いから、夜間の洗濯機の音や、玄関の施錠ルールなどで些細な行き違いが発生。佐藤さんは、これからも長く一緒に暮らすのだからと、膝を突き合わせてルールを決めようとしました。
しかし、健一さんの反応は佐藤さんの想定とはまったく違うものでした。
「親父、そんなに気を使わせてしまって申し訳ないよ。僕らも、親父たちに我慢させてまで住みたくはないんだ。もしお互いにストレスになるなら、無理して同居を続けなくてもいいんじゃないかな?」
穏やかな口調の健一さん。喧嘩腰でもなければ、悪意もなく、むしろ「親を気遣っての提案」というトーンだったそうです。しかし、その言葉を聞いた瞬間、佐藤さんは血の気が引く思いがしたといいます。
「息子はあっさりと『やめようか』と言うんです。まるで合わないサークルを辞めるかのように。私にとっては、老後資金の半分近くを投じた『絶対に失敗できないプロジェクト』でした。でも息子にとっては『タダで試してみた選択肢』のひとつに過ぎなかったようで……」
息子夫婦に悪気はありません。「親父に悪いから、また近くで賃貸を探すよ」と、あくまで合理的かつ平和的な解決策を提示してきたわけです。「リフォームに2,500万円もかけたんだから、我慢して住んでくれ」とは、プライドが邪魔をして言えなかったとのこと。そして、同居から1年ほど経ったあと、長男家族はあっさりと引っ越していきました。
「息子の異動と、孫の私立中学への進学がちょうど重なり、『通勤・通学の便利なところに引っ越したい』と相談があって……この家に執着がないので、仕方がないですよね。身銭を切っていれば、簡単に『引っ越したい』なんて言えなかったでしょうに」