「次男だから義実家のしがらみとは無縁」「長男がいるから安泰」……そう信じて結婚したはずが、親族の事情ひとつでその前提が覆ることは珍しくありません。かつて当たり前だった「家督は長男が継ぐ」という不文律が崩れつつある現代、家やお墓の管理問題は、誰の身に降りかかってもおかしくない切実なリスクとなっています。
 「あなたのお墓よ。」35歳次男に嫁いだ妻、笑顔の義両親に絶句。気楽な結婚生活のはずが、初帰省でまさかの急転直下 (※写真はイメージです/PIXTA)

「次男嫁なら安泰」と信じていた…28歳女性を襲った、義実家での「戦慄の通告」

都内のIT企業で働く佐藤理奈さん(28歳・仮名)は、1年前にメーカー勤務の夫、健二さん(35歳・仮名)と結婚しました。理奈さんが結婚の決め手のひとつとして挙げていたのが、健二さんが「次男」であるという点です。

 

「私の実家は本家との付き合いが濃く、母が苦労している姿を見て育ちました。だから、長男との結婚には抵抗があって……。健二さんは次男だし、お義兄さん(健一さん・38歳・仮名)もいるから実家のことはノータッチでいい、と聞いて安心していたんです」

 

交際中、健二さん「兄貴は地元で公務員をしているし、両親と同居も考えているみたいだから、俺たちは自由だよ」と笑っていました。理奈さんはその言葉を疑うことなく、気楽な共働き生活をスタートさせました。

 

結婚して初めて義実家への帰省。「お客さん気分でいけばいいから」という健二さんの言葉通り、出迎えてくれた義両親は満面の笑みで歓迎してくれました。立派な日本家屋に、手の込んだ郷土料理。長男である義兄は仕事の都合で不在でしたが、義父母との会話も弾み、理奈さんは「いいご両親でよかった」と胸をなでおろしていたのです。

 

しかし、夕食後の団らんの最中、空気が一変しました。

 

「健二、理奈さん。ちょっとこっちへおいで」

 

義父に手招きされ、連れていかれたのは仏間でした。そこには立派な仏壇があり、壁には先祖代々の遺影が飾られています。義父は神妙な面持ちで座布団を勧めました。

 

「実はな、健一のやつ、婿に入ることになってな」

 

想像もしていなかったことに、健二さんも理奈さんも言葉を失くしました。長男・健一さんは地元の有力者の娘との結婚が決まったものの、その家には跡取りがおらず、婿に入ってほしいという話があったというのです。

 

「この家はどうするんだよ」と健二さんが声を上げると、横にいた義母がニコニコと笑いながら、窓から見える裏山の墓地を指さし、「だからね、この家とお墓は、あなたたちに頼みたいの。この家は、いずれあなたたちのもの。理奈さん、あそこにあなたたちのお墓があるの」

 

理奈さんは言葉を失いました。義母の笑顔は、決して悪気があるわけではありません。しかし、その無邪気な「あなたのお墓」という言葉は、理奈さんにとって「一生、この家と墓の世話から逃れられない」という宣告に他なりませんでした。

 

義父は「お前たちしかいないんだ。頼んだぞ」と頭を下げるばかり。理奈さんは笑顔のまま固まるしかなく、その夜は一睡もできませんでした。

 

「次男だから」「東京に住んでいるから」という理奈さんの結婚の前提は、親族の事情ひとつで簡単に覆りました。帰りの新幹線で、健二さんは「まあ、まだ先の話だし」と楽観的でしたが、理奈さんの頭のなかには、あの古びた墓石と、広すぎる日本家屋の管理への不安が渦巻いていたのです。