(※写真はイメージです/PIXTA)
30年続けてきた親への仕送り
毎年、正月の三が日には必ず帰省をするという、東京都内在住の会社員、田中達也さん(56歳・仮名)。実家で1人暮らしをしている母の田中ハナさん(82歳・仮名)は、夫を早くに亡くし、女手ひとつで達也さんと妹2人を育ててくれました。そんな母への感謝として、毎月5万円ほどの仕送りを30年以上も続けているといいます。
「私も余裕があるわけではありません。妻に頭を下げ、自分の小遣いを削って捻出してきたお金です」
ハナさんの年金は月12万円ほどで、手取りにすると10万~11万円ほど。持ち家なので家賃はかかりませんが、それだけで余裕のある暮らしができるわけではありません。そこに月5万円の仕送りがあれば、暮らしは楽になるだろう……。それでもハナさんの生活は質素そのものだったそうです。
「少しぐらい贅沢をしてもバチは当たらないと思うのですが、倹約がモットーで。昔の人だからと思っていたのですが……」
事態が急変したのは、昨年の正月でした。高齢の母には難しい力仕事を一手に引き受けるのが恒例で、風呂場のカビ取り、高いところの蛍光灯交換、そして溜まった粗大ごみの整理――そのとき、ふとタンスの引き出しから10冊以上の通帳が出てきたのです。それは、達也さんが毎月仕送りを振り込んでいる口座の通帳。そこには30年間の記録がありました。
「母は几帳面な性格で、通帳の記帳もマメに行っています。パラパラとめくると、毎月25日に私が振り込む『5万円』の入金記録がありました。しかしその直後、決まって28~30日の間に5万円が出金されている履歴に違和感を覚えました」
質素な生活を送る母。他の出金はランダムで、恐らく本当に必要なときに引き出していたのでしょう。そんななか、この5万円の出金だけがあまりに規則的だったのです。「たまたま習慣化していることなのか?」と思い、何気なくハナさんに尋ねてみました。すると明らかに表情が強張り、「え、いや、それは……生活費だよ」と目を逸らしたといいます。その不審な様子に、達也さんのなかで疑念が強くなりました。
「変な商法にでも引っかかっているのではないかと心配で。それで結構強い口調で問い詰めたんです。そうしたら母は観念したみたいで……」
ハナさんから聞かされたのは衝撃的な事実でした。それは、妹の美知子さんと早智子さんに渡していたというもの。2人は実家から車で15~30分ほどの場所に住んでいます。近くに2人がいるからこそ安心して、達也さんは進学のために上京し、そのまま就職、東京で家庭を持ちました。
「母は『子ども(孫)にお金がかかる時期だから』というのですが、それにしても30年以上も定期的に小遣いを渡していたとは夢にも思っていませんでした」
30年間、母の生活の足しになればと、自分の昼食代を削って送り続けたお金が、そのまま妹たちへと渡っていた事実。もちろん、妹たちには感謝の気持ちもあります。しかし、いつまでも親離れできないでいる妹たちに幻滅したといいます。
「母は80代ですよ。そんな年齢の親から援助をもらうなんて。普通なら断りませんか?」
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