高齢者の住まいとして存在感が増している「老人ホーム」。入居が決まったとき、多くの家族は安堵し、そこで「ゴール」したかのように錯覚します。しかし、老人ホームへの入居は、あくまで新しい生活のスタートに過ぎません。入居時には完璧に見えても、時間の経過とともに綻びが出ることもあります。一度は手に入れたはずの安住の地を去らなければならない、または自ら去る決断をすることも珍しくはありません。今回は、ネットの口コミを信じて老人ホームを決めたある母娘についてみていきます。
年金月14万円・78歳母「口コミ高評価」の老人ホームに入居。48歳娘も意気揚々だったが、翌日には後悔…ネット評価に潜む「星の数のからくり」 (※写真はイメージです/PIXTA)

「まさか母がこんな目に」ネットの情報を鵜呑みにした代償

「こんなことになるなら、もっと自分の目で確かめるべきでした。ネットの星の数や評判なんて、何の意味もなかったんです」

 

田中美咲さん(仮名・48歳)。彼女は半年前に78歳の実母・美子さん(仮名)を有料老人ホームに入居させましたが、わずか3ヵ月で退去を決断することになりました。

 

入居のきっかけは、昨今の老人ホーム事情について特集したテレビ番組を観たこと。そこで紹介されていた老人ホームは、美咲さんが思い描いていた施設とはまったく異なるものでした。

 

「子どものころに抱いたイメージから、老人ホームは薄暗く、陰気なものだと思っていました。ただテレビで観たホームは、まるでリゾートホテル。清潔で明るくて豪華で。イメージが180度変わりました」

 

ちょうどそのころ、1人暮らしをしていた美子さんが、築50年の自宅をどうするか悩んでいました。住み続けるなら、建て替えが必須。しかし、80歳手前での建て替えは現実的ではない――そこで急浮上したのが、イメージがガラリと変わった老人ホームだったわけです。

 

「母は当初、老人ホームへの入居には消極的でした。しかし、ネットで今どきのホームがどのようなものか見せると、『こんな素敵なところに入れるならいいわね』と言ってくれて。早速、ホーム探しが始まったんです」

 

まずスマートフォンで「地域名 老人ホーム 評判」と検索。検索結果の上位に出てきた介護施設は、レビューサイトでも「星4.8」と非常に高い評価を獲得していました。ホームは新しくオープンしたばかりで、建物は美しく、まるでホテルのようなロビーに笑顔のスタッフ――口コミをみていくと、「施設がとても綺麗」「スタッフが親切で安心」といった絶賛のコメントが並び、「ここなら間違いない」という確信に変わっていきます。月額費用は20万円。年金月14万円の母ですが、足りない分は貯金で補填することにすると、予算面でもバッチリでした。

 

すぐに資料請求すると、翌日には担当者から電話があり、見学に行くとトントン拍子で契約が進みました。担当の営業マンは本当に親切で、「お母様を全力でサポートします」と言ってくれたそうです。

 

しかし、その「高評価」の看板は、入居した翌日から色あせ始めます。

 

「面会に行くと、母の服が食べこぼしで汚れたままなんです。ナースコールを押しても、スタッフはなかなか来ない。やっと来ても『はいはい、どうしたんですか』と事務的に対応して、すぐにどこかに行ってしまう――そこでわかったのが、新規オープンのため経験あるスタッフは数える程度ということ。ほとんどが経験の浅いスタッフで、明らかにバタついているのです。サービスは行き届かず、とても『星4.8』の施設とは思えませんでした」