物価高と増税の波は、一見優雅な「勝ち組」シニアの生活さえも静かに蝕んでいます。立派な持ち家や十分な退職金がありながら、毎年の固定資産税や維持費に現金を奪われる「資産持ちの貧困」。資産があるがゆえに周囲に頼れず、ひっそりと社会から孤立していく――。本記事では、FPの川淵ゆかり氏のもとへ寄せられた相談事例をもとに、現代特有の老後リスクに迫ります。※事例は、プライバシーのため一部脚色して記事化したものです。
クリスマスイルミネーションが煌々と輝く豪邸だったのに…退職金計4,500万円の60代元国家公務員夫婦の家。玄関の奥は「風呂週1回・食事1日2回・ゴミまみれ」の限界生活と暗闇【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

意外と身近な危機

幸い、Aさん夫婦は帰国した息子によって発見されました。その後、維持困難な家は売却され、現在は都内のマンションで生活を立て直しています。

 

しかし、これは決して他人事ではありません。現在、60代、70代の人はバブルを経験しており、悠々自適な老後を思い描いて過ごしてきた世代です。ところが現実は、退職金の減少や思ったよりも少ない年金、そしてここ数年は予想もしなかった物価高などが老後の暮らしを直撃しています。老後に不安を覚える人も多いでしょう。

 

「遊びたくてもお金がない」「働こうと思っても仕事がない」そんな閉塞感が孤独を生み、セルフネグレクトの引き金となります。

 

将来のことを予測するのは難しいですが、現役時代から、趣味や働き方も含め、どのような老後を送るのかを具体的に考えていくことが重要です。

 

また、受け継いだ資産は、維持できなければ負債に変わってしまいます。日本では空き家問題もますます大きくなってきますので、「実家をどうするか」は待ったなしの課題です。早いうちから子どもと一緒に、現在の住まいの維持や老後の住み替えなどについて話し合うようにしましょう。

 

資産は築くだけでなく、守り、活かしてこそ、真の価値を持つのです。

 

 

川淵 ゆかり

川淵ゆかり事務所

代表