高齢者の住まいとして存在感が増している「老人ホーム」。入居が決まったとき、多くの家族は安堵し、そこで「ゴール」したかのように錯覚します。しかし、老人ホームへの入居は、あくまで新しい生活のスタートに過ぎません。入居時には完璧に見えても、時間の経過とともに綻びが出ることもあります。一度は手に入れたはずの安住の地を去らなければならない、または自ら去る決断をすることも珍しくはありません。今回は、東北から上京し、老人ホームに入居したある女性のケースをみていきます。
寂しい、帰りたい…東北から上京、月額16万円・サ高住に入居の84歳母の孤独。息子のそばが“幸せ”とは限らない「呼び寄せ介護」の誤算 (※写真はイメージです/PIXTA)

「高評価」=「良い施設」ではない?

株式会社LIFULL senior/LIFULL 介護『介護施設入居実態調査 2025』によると、老人ホームを探すときに利用した方法として、トップは「ケアマネージャーに相談した」が44.2%。「インターネットで調べた」が35.6%で続きます。あらゆることを決めるのに、ネットが欠かせない昨今。その流れは「老人ホーム選び」においても顕著になっています。

 

また老人ホームを探す際、金額や立地のほかに重視したものとしては、「スタッフの質・雰囲気」がトップで32.4%。見学に訪れた際のイメージが、入居の決め手になるということでしょうか。一方で、老人ホーム選びにおいて重要ポイントでありながら、ネット検索ではなかなか見えてこない部分であり、入居後のトラブルの原因となりやすい部分かもしれません。

 

同調査では、「入居前に想定していなかった点」を聞いていますが、その4位が「受けられると思ったサービスが受けられない」(14.7%)でした。田中さんのケースは、「新規オープン」が裏目に出てしまったもの。経験の浅いスタッフが多く、口コミ等で期待したサービスを受けられていないと感じたようです。

 

そもそもネットで多くみられる「高評価」には基準がさまざまです。田中さんが参考にした口コミは、実は「見学時の印象」や「建物の綺麗さ」に対するものがほとんどでした。新規オープンのため、まだ実際の介護サービスに対する評価は定まっておらず、宣伝活動や内覧会での「好印象」がそのまま星の数に反映されていたのです。当然、検索でも上位に来やすくなります。

 

しかし、「高評価」「星の数」という視覚的な情報だけで、田中さんは全面的に信頼してしまいました。ネット検索が当たり前になっている「老人ホーム選び」において、「一次情報」を自分で吟味することが大切。前述の調査でも、見学した施設数は平均「2.8ヵ所」でした。1ヵ所見学しただけで決めるのではなく複数を比較する。そして、見学の際は、案内してくれる相談員だけでなく、廊下ですれ違うスタッフの表情や、入居者への言葉遣いを観察する。しっかりと比較・検討することで、ネットの情報だけでは見えてこない、老人ホームの本当の姿が見えてくるかもしれません。

 

[参考資料]

株式会社LIFULL senior/LIFULL 介護『介護施設入居実態調査 2025』