「老後資金さえあれば安泰」とは限りません。経済的な不安がなくとも、ふとしたきっかけで生活が破綻し、命に関わる「セルフネグレクト」に陥るケースは後を絶ちません。ある70代の男性のケースをみていきます。
「うっ、ウソだろ…」半年ぶりの帰省で38歳息子が絶句。年金月20万円・都内実家で「孤独死寸前」だった78歳父の惨状 (※写真はイメージです/PIXTA)

日本の高齢男性を襲う「社会的孤立」

経済的に困窮していなくても、配偶者との死別などをきっかけに生活が破綻し、自らの健康や安全を無視して放置する「セルフネグレクト(自己放任)」に陥る高齢者の存在は、特別なものではありません。

 

日本の高齢男性は、国際的に見ても社会的に孤立しやすい傾向にあります。日本、アメリカ、ドイツ、スウェーデンの4カ国の高齢者を対象とした内閣府『高齢者の生活と意識に関する国際比較調査(令和2年度)』によると、他国と比較して日本の高齢者は「親しい友人がいない」と回答する割合が高いことがわかっています。

 

同調査では「親しい友人の有無」について尋ねていますが、同性・異性関わらず「親しい友人がいない」と回答した割合は、日本が圧倒的に多いことがわかります。

 

▼「親しい友人はいない」と回答した高齢者の割合

日本:31.3%

アメリカ:14.2%

ドイツ:13.5%

スウェーデン:9.9%

 

特に日本の男性の場合、人間関係が会社中心で形成されてきたため、退職と同時に社会との接点を失いがちです。そこに「配偶者の死」というトリガーが引かれることで、唯一の他者とのつながりすら失い、一気に孤立が深まるケースが目立ちます。

 

「うちの親は大丈夫」「うちの親はお金があるから何とかなる」と考えている人も多いでしょう。しかし、会社という肩書きがなくなった後、地域のなかに自分の居場所や、気軽に話せる友人がいなければ、誰もが「孤立死予備軍」となり得ると考えておいたほうがよさそうです。

 

[参考資料]

内閣府『高齢者の生活と意識に関する国際比較調査(令和2年度)』