親の焦りが、不登校の子どもを追い詰め、結果としてひきこもりや家出に陥ってしまうことも。自己否定の塊となっている子どもに対し、家庭が安全地帯として機能しなくなったとき、子どもは「部屋に閉じこもる」か、外の「危険な大人」に依存するかの2択を迫られます。本記事では齊藤万比古氏(児童精神科医)監修の書籍『不登校・登校しぶりの子が親に知ってほしいこと: 思春期の心のメカニズムと寄り添い方』(大和出版)より、不登校児を孤立させ、反社会的な勢力に取り込ませてしまう、家庭内の悪循環について解説します。
母親に受け入れてもらえない…「パパ活」「闇バイト」に“疑似家族”を求める不登校児の本音 (※写真はイメージです/PIXTA)

不登校の子、家で受け入れてもらえないときの行動

不登校の子の心の拠りどころは基本的に母親。でも、母親に受け入れてもらえない子もおり、そのとき子どもがとる態度はふたつあります。

 

ひきこもる子ども

ひとつは自分の殻に閉じこもるパターンです。このパターンの子の母親は、顔を合わせれば「学校に行きなさい」としか言わず、子どもの話を聞こうとしません。期待をかけたわが子が不登校になったことに失望し、「自分の夢を託した子なのに」と、子どもを否定してしまいがちです。父親がもともと疎遠で、母親との関係に亀裂がある家庭も見受けられます。

 

こうした家庭では、子どもは自室にひきこもってしまいます。母親は部屋の前にご飯を置くしかなく、子どもは自室で食事をとり、後はスマホやゲームに没入します。なかにはうつなどの精神疾患を発症する子もいます。誰も発症に気づけないまま、なかなか治療につながらないこともあります。

 

親、とくに母親が子どもを受け入れ、現状を認める意思を子どもに示すことが大切です。困ったことに、自分に閉じこもった子どもに、カウンセラーや医療者が親御さんを通じて働きかけるのは難しいものです。母親とのカウンセリングのなかで、子どもの幼少期のことなどを回想し話してもらうことで、徐々に母性的受容の姿勢をとれるよう母親を支えます。

 

飛び出す子ども

もうひとつのパターンは、家庭の外部に存在する「疑似家族」への接近です。子どもは自分が家族に受け入れられないと感じると、家を出て「疑似家族」に走ります。かつては非行集団や反社会的勢力が受け皿になっていました。しかし、時代とともにこうした組織は地下化しています。SNSなどを通じて巧妙な手口で、女子は性犯罪に、男子は組織犯罪に巻き込まれるリスクが高まっています。

 

これを防ぐには、子どもに「家庭にいてもいい」という安心感を与えることです。親は怒りで子どもをコントロールしようとせず、穏やかに気持ちを聞きながら関わる必要があります。強制的にSNSを断ち切ると反発して逆効果になるので注意しなくてはなりません。

 

[図表1]親との信頼関係が保たれている

 

[図表2]親との信頼関係が崩れている

 

 

齊藤 万比古

恩賜財団母子愛育会

愛育研究所顧問