近年、単身高齢者や子どもが遠方に住む世帯の間で「身元保証サービス」の需要が増加しています。入院や施設入居の際に必要な身元保証を民間企業が請け負う仕組みですが、その裏側には、法整備が追いついていないゆえの落とし穴が潜んでいます。
「息子に迷惑をかけたくなかったのに」貯蓄4,000万円でも安心できない…年金月15万円・76歳女性、身元保証会社倒産で「保証人不在」の絶望 (※写真はイメージです/PIXTA)

「子どもに迷惑をかけたくない」という親心が招いた、孤独な選択の末路

佐藤節子さん(仮名・76歳)。3年前に夫の正雄さん(仮名・享年78)を癌で亡くしました。正雄さんは大手メーカーの技術職として働き、遺された節子さんには遺族年金を含めて月15万円の年金、4,000万円近い貯蓄、都内の一等地に建つ分譲マンションがありました。

 

金銭的な不安はなかった節子さんですが、心に重くのしかかっていたのは「もしもの時」のことです。一人息子の健一さんは、10年前から米国に拠点を置いており、現地の女性と結婚。仕事も多忙を極め、帰国は数年に一度という状況でした。

 

「息子には向こうの生活がある。私の介護や死後の手続きで、仕事を休ませたり日本に呼び戻したりするのは忍びないと思ったんです」

 

そんな折、節子さんは新聞広告で見かけた「身元保証サービス」に目を留めます。入会金と預託金、あわせて約300万円を支払えば、入院時の身元保証から、認知症になった際の財産管理、さらには死後の葬儀・納骨まで全て請け負うという内容でした。節子さんは「これで息子に迷惑をかけずに済む」と安堵し、健一さんにも事後報告で契約を済ませました。

 

しかし、平穏な日々は長くは続きませんでした。契約から4年が経過したある日、節子さんの元に裁判所から「破産手続開始決定」の通知が届きます。契約していた保証会社が、ずさんな経営の末に倒産したのです。

 

「驚きました。預けていたお金が戻らないことよりも、これから先、もし私が倒れたら誰が病院の手続きをしてくれるのか。マンションを引き払って施設に入ろうとしても、保証人がいなければ門前払いされてしまう……」

 

節子さんの不安は的中しました。持病の心疾患が悪化し、医師から手術を勧められた際、病院側から「緊急連絡先と、手術の同意書にサインできる身近な代理人を立ててください」と求められたのです。倒産した会社に電話をかけても繋がりません。シアトルの息子に連絡すると、「すぐには帰れない。どうしてそんな怪しい会社と契約したんだ」と電話越しに責め立てられたといいます。

 

「お金さえ払えば、家族の代わりは買える……そう信じて何も考えなかった自分が情けなかったですね」

 

佐藤さんはその後、病院のソーシャルワーカーの助言を受け、地域の包括支援センターに相談へ向かいました。現在は、社会福祉協議会が実施する「日常生活自立支援事業」を利用し、福祉サービスの利用手続きや日常的な金銭管理のサポートを受けています。