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夫の家事参加は進んでいるのか?
夫のほうが2~3歳年上という夫婦が多いなか、夫が先に定年を迎え、無職になるというケースは珍しいことではありません。ここで問題となるのが「家事の分担」です。長年染みついた「家事は女性の仕事」という意識は、専業主婦世帯はもちろんのこと、共働き夫婦においても残っています。
国立社会保障・人口問題研究所『第7回全国家庭動向調査』によると、妻が60歳未満の夫婦において、1日あたりの家事時間は、妻が平日247分、休日276分であるのに対し、夫は平日47分、休日81分。また家事の総量を100%とした際、分担割合は夫19.4%に対して妻は80.6%となり、圧倒的に妻の家事負担が大きいことがわかります。
さらに妻の従業上の地位別にみていくと、妻が正規社員の場合、「妻の家事分担が100%」が9.6%、「90~99%」が23.1%、「80~89%」が17.9%、「60~79%」が28.2%です。これだけで8割弱を占めており、「共働きであっても、主に家事を行うのは妻」というケースが主流なのがわかります。
加えて、近年は高齢期の妻の就業率も上昇傾向にあります。総務省統計局『労働力調査(2023年)』によれば、60~64歳女性の就業率は63.4%、65~69歳でも42.2%に達しています。「家事は妻の役割」という前時代的な考えで、家事負担を一手に引き受けてきた共働き妻。しかし、夫の完全リタイア後もその役割を担うのは、さすがに不満がたまります。
佐藤さんの事例のように、定年退職した夫が家事の主導権を握ろうと努力するものの、スキル不足や妻からの評価の厳しさに直面し、心が折れてしまうケースは今後さらに増えるかもしれません。定年を境に収入が逆転したとき、家庭内のパワーバランスもまた変化します。「手伝う」という意識を捨て、生活を共にするパートナーとして家事といかに向き合うか。これは多くの熟年夫婦が直面する、避けては通れない課題といえるでしょう。
[参考資料]
国立社会保障・人口問題研究所『第7回全国家庭動向調査』
総務省統計局『労働力調査(2023年)』