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6割弱の高齢者が「住み慣れた地域」への住み替えを希望
親の老後を心配するあまり、子どもが先回りして住み替えを決断し、結果として親の心身の健康を損ねてしまうケースは少なくありません。 これは「呼び寄せ」の典型的な失敗例のひとつといえます。
内閣府『令和5年度 高齢社会に関する意識調査』によると、住み替え希望がある高齢者(「意向を持っている」、「現時点ではないが、状況次第で将来的には検討したい」の合計)は、30.4%。 住み替え先として最も多いのが「同一市町村内」で43.0%。「同一都道府県内・他市町村」と合わせると57.3%と、6割弱が同一都道府県内での住み替えを希望しています。
また住み替え先と考える場所との馴染みの程度を聞いたところ、「実家のある場所」が16.9%、「実家を除く住んだことがある場所」が32.8%。 住み替えにおいて、馴染みがある場所を希望する人は半数を占めています。
事例の健造さんのように、地方から都市部への呼び寄せは、方言や生活リズム、近所付き合いの質の変化など、ストレス要因が複合的に重なります。 家事ができないからといって、家族との同居が必ずしも正解とは限りません。
親を呼び寄せる際は、いきなり同居を始めるのではなく、まずは1週間程度の「お試し期間」を設ける、あるいは配食サービスや家事代行を利用しながら実家での生活を維持する方法を探るなど、親の「役割」と「居場所」をどう守るかという視点が不可欠です。
「あのあと父と相談して、秋田の実家近くにある施設に入ることにしました。近くに住んでいるほうが私たちは安心ですが、あんな父は、もう見たくないので」
[参考資料]
内閣府『令和5年度 高齢社会に関する意識調査』