定年を目前に控え、老後の安泰を信じていたはずが、蓋を開ければ貯蓄がほとんどない――。高収入世帯であっても、家計の実態を把握していなければ、このような事態は誰にでも起こり得ます。ある夫婦のケースをみていきましょう。
俺の金はどこへ消えた?〈年収1,200万円〉〈小遣い2万円〉57歳夫、貯金残高に絶句。52歳妻「悪意なきどんぶり勘定」の末路 (※写真はイメージです/PIXTA)

年収1,200万円超でも、10世帯に1世帯は「貯蓄ゼロ」の現実

株式会社プラスエイトが20~50代の既婚男性に行った『結婚後のお金事情に関する調査』によると、お小遣い制と回答したのは20代で35.6%、30代で36.5%、40代で38.3%、50代で49.2%。小遣い制になったのは「結婚当初」が83.9%と圧倒的です。昨今は夫婦で財布を分けるのがメジャーなのかもしれませんが、ひと昔前は、男性は仕事、女性は家庭、そして家計の管理、というのが一般的でした。年齢があがるにつれて小遣い制が増えるのは、このような時代背景にあるのかもしれません。

 

いずれにせよ、小遣い制の場合、管理を担う妻が開示しない限りは、家計の状況はブラックボックスになりがち。まさに健二さんのケースです。

 

 

金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和5年)』によると、50歳代の金融資産保有額の平均は1,147万円ですが、中央値を見ると300万円まで下がります。さらに、金融資産を保有していない(貯蓄ゼロ)世帯も27.4%に上ります。 また世帯年収ごとにみると、年収1,000万~1,200万円未満世帯で貯蓄ゼロ世帯は11.5%、1,200万円以上の世帯では9.7%。高収入であっても貯蓄ゼロというのは珍しいことではありません。

 

一方、生命保険文化センター『生活保障に関する調査/2022(令和4)年度』によると、夫婦2人で老後生活を送るうえで必要と考える最低日常生活費は月額で平均23.2万円。そこから考えると、夫婦の老後が20年続くとすれば5,500万円強、30年続くとすれば8,300万円強が必要になります。そのうち、どの程度年金で賄うことができるのか、あらかじめシミュレーションをしておかないと、老後破産が現実になるでしょう。

 

「幸い、あと2年で教育費負担からは解放される。私も給料が減るのは避けられませんが、60歳以降もこのまま働けるはずです。70歳くらいまでには、仕事をしなくてもいいように、今からでも資産形成を本格化させようと考えています」

 

[参考資料]

株式会社プラスエイト『結婚後のお金事情に関する調査』

金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和5年)』

生命保険文化センター『生活保障に関する調査/2022(令和4)年度』