(※写真はイメージです/PIXTA)
交通事故の約4倍。高齢者を襲う「住宅内事故」のリアル
健一さんが目の当たりにしたように、高齢者にとって最も身近で、かつ重大な事故現場となり得るのは「住み慣れた自宅」です。
消費者庁によると、高齢者の「不慮の事故」による死亡者数のうち、「転倒・転落・墜落」による死亡者数は、令和3年で9,509人。一方で交通事故による死亡者数は2,150人でした。さらに、転倒事故の発生場所として最も多いのが「住宅」であり、その約半数を占めているという現実があります。
なぜ、慣れ親しんだはずの家で事故が起こるのでしょうか。最大の要因は、加齢に伴う身体機能の低下と、住環境のミスマッチです。視力の低下により薄暗い場所での段差が見えにくくなり、筋力の低下ですり足気味になることで、わずかな段差やカーペットの縁にもつまずきやすくなります。
健一さんの実家のように、切れた電球を放置することは、転倒リスクを劇的に高めます。特に夜間のトイレ移動などは要注意です。東京消防庁のデータでも、高齢者の「ころぶ」事故の発生場所として「居室・寝室」がトップです。「玄関・勝手口等」、「廊下・縁側・通路」と続きます。
こうした事故を防ぐために、親がひとりで暮らす実家に帰省した際、子がチェックすべきは「室内の安全」です。
・照明の明るさ:電球が切れていないか、足元が暗くないか。
・床の障害物:新聞紙や雑誌が床に置かれていないか。電気コードが動線を横切っていないか。
・段差の解消:玄関マットやカーペットがめくれていないか。
これらは、元気な現役世代にとっては些細なことでも、高齢者にとっては命取りになりかねない「危険な罠」です。親が「できない」「怖い」と言い出す前に、子がそのサインに気づき、LED電球への交換やセンサーライトの設置、床の片づけといった具体的な対策を講じることが、親の命を守ることに繋がります。
[参考資料]
消費者庁「無理せず対策 高齢者の不慮の事故」(令和4年12月作成)
東京消防庁『救急搬送データからみる高齢者の事故』