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「そんなもの飲みたくない」……お薬カレンダーの前で拒否する母
東京都内で働く田中美咲さん(45歳・仮名)。埼玉県の実家で1人暮らしをする母・良子さん(75歳・仮名)のもとを訪れた際、「ある変化」に気づいたといいます。
「食後にいつものように高血圧とコレステロールの薬を手渡そうとしたんです。そうしたら、母が『いらないわ』と手を払いのけて。『どうしたの? 飲まなきゃ』と言っても、『あんなもの、飲みたくないの』と……」
数カ月前に電話で「薬、飲んだっけ?」と笑っていた頃とは、明らかに様子が違ったと美咲さんは振り返ります。
「母が不機嫌そうに黙り込んでしまったので、以前私が渡した〈お薬カレンダー〉を確認しに行ったんです」
そこに残されていたのは、単なる「飲み忘れ」とは違う、不可解な状況でした。
「カレンダーを見たら、月曜と火曜の分は手つかずで残っているのに、水曜日の『朝』だけが飲まれていて。昼と夕はまた残っている。飲み方がめちゃくちゃだったんです」
美咲さんが「どうしてこんな飲み方をしてるの?」と問いただすと、良子さんは「だって、この薬を飲んだら一日中ふらふらして気持ち悪くなったのよ」と訴えたといいます。良子さんが指差したのは、最近かかりつけ医が変わった際に新しく処方された、少し大きめの錠剤でした。
「母は『もうあんな思いはしたくない』と。どうやら副作用が怖くて、飲むのをやめたり、自己判断で飲んだりしていたようでした」
さらに良子さんは「お医者さんなんて、どうせ『年のせいだ』って言うだけ」「私は元気なんだから、もう必要ないの」とまで言い出したそうです。
「副作用への恐怖だけでなく、医師への不信感、さらには自分が病気だという認識自体が薄れているように感じました。単なる物忘れだと思い、お薬カレンダーで解決すると思っていた自分が甘かった……」