(画像はイメージです/PIXTA)

近年、富裕層や資産家のあいだで注目を集めている「不動産小口化商品」。とりわけ「任意組合型」のスキームは、単なる投資商品にとどまらず、相続・贈与対策の実務において非常に有効なツールとして、税理士や資産管理の専門家から高い関心を集めています。本記事では、任意組合型商品がなぜ相続・贈与対策に有効なのか、その仕組みと効果、さらに実務上の注意点や活用の工夫について、専門家の視点から詳しく解説します。

「任意組合型」が、相続対策で評価される理由

小口化商品のなかでも、「任意組合型商品」が相続の現場で注目される最大の理由は、相続税評価額の引き下げ効果にあります。

 

任意組合の持分は「非上場資産かつ共同保有」という性質を持つため、市場性の欠如や分割困難性が考慮されます。その結果、通常の土地建物を直接所有する場合に比べて、相続税評価が実勢価格より20~50%低下するケースが実務上しばしば見られます。

 

また、現金で保有するよりも評価圧縮効果が大きいため、相続税の負担軽減につながりやすいのです。

 

さらに、任意組合型は単なる評価圧縮だけでなく、分割しやすさという点でも強みがあります。1口数百万円単位で区切られているため、複数の相続人がスムーズに分け合うことが可能です。現物不動産のように「分けられない」「売却しないと相続できない」といった問題が発生しにくく、相続人間のトラブル回避にも役立ちます。

 

また、賃料収入を原資とした分配金が定期的に支払われるため、相続後も安定した現金収入源として機能します。つまり「評価圧縮」と「収益性」を兼ね備えた資産として、現金よりも相続に適した形態といえるのです。

次世代へ“現物感覚”で移転…任意組合型は「贈与」にも「資産教育」にも有効

相続対策に加えて、任意組合型は贈与スキームにおいても非常に有効です。特に「評価額を抑えた状態での資産移転」が可能となる点は、富裕層の長期的な承継計画において大きな魅力となっています。

 

組合持分を贈与することで、相続前に評価額を下げた状態で資産を移転できます。実勢価格より低く評価される持分を用いれば、現金や上場株式をそのまま贈与する場合と比べて、贈与税負担を抑えることが可能です。

 

贈与税の基礎控除(年110万円)を活用し、数年に分けて少額ずつ持分を贈与していけば、まとまった資産でも大きな負担をかけずに移転できます。計画的な分割贈与は、節税だけでなく後継者教育の観点でも効果的です。

 

家族間で持分を分け合うことにより、「現物不動産を共同所有している感覚」を持てる点も特徴です。これは単なる数字上の贈与ではなく、実感を伴った「資産の承継」につながります。

 

たとえば、子や孫に少額ずつ任意組合型持分を贈与することで、「不動産オーナーとしての意識」や「資産管理の感覚」を体験的に学ばせることができます。現金贈与は使途が自由である一方、教育的な効果は限定的です。しかし任意組合型の持分なら、毎年の分配金を通じて「収益を得る実感」と「資産を保有する責任」を自然に学ぶことができます。単なる相続対策を超え、“資産教育型スキーム”としての価値を備えているのです。

 

さらに、法人からの贈与や家族信託と組み合わせることで、より高度で柔軟な資産設計も可能です。

 

たとえば、自社株の承継と不動産小口化商品を併用し、後継者の資産バランスを調整するケースや、家族信託を利用して認知症リスクに備えながら分配ルールを設計する事例も増えています。こうした組み合わせにより、単発的な贈与ではなく、包括的な承継戦略の一部として任意組合型を位置づけることができるのです。

税務署は形式より「実体」重視…任意組合型を「相続・贈与」に生かすポイント

もっとも、任意組合型を相続・贈与対策に利用する場合に忘れてはならないのが、税務署の視点です。税務署は常に「形式」ではなく「実体」を重視しており、形だけのスキームは容易に否認されてしまいます。

 

任意組合型を用いたスキームでも、次のような点が問われます。

 

投資の実体性……収益構造が合理的か、投資家としてリスクを負担しているか。
組成者の姿勢……販売会社や運営者の利益相反、恣意的な設計がないか。
運用の透明性……分配実績、定期報告、組合員議事録など、継続的な運用記録の整備がなされているか。
 

 

組合持分を贈与したものの、“証拠不足”で認められなかったケースも

過去には、組合持分を親から子に贈与した事例で、税務署から「実質的に親が運用をコントロールしており、贈与の実態がない」と指摘されたケースがありました。この場合、分配金が実際に子に渡っていたか、組合議事録に子の意見や署名が反映されていたか、といった点が詳細に確認されました。

 

つまり、分配金が実際に受贈者の口座に振り込まれることや、議事録や契約書に受贈者の意思が反映されていることが重要なチェックポイントになるのです。

 

任意組合型を活用する際には、「相続対策のための形式的な贈与」に見えないように、実際に投資としての実体を伴わせることが不可欠です。逆にいえば、この実体性を担保できれば、任意組合型は相続・贈与対策において極めて強力な手段となります。

 

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