親が大切にしてきた実家も、子世代にとっては「負動産」となり得る時代。 全国で深刻化する空き家問題や所有者不明土地問題は、決して他人事ではありません。 なぜ、親子の間で相続に関する意識のギャップが生まれるのでしょうか。 ある親子のケースをみていきます。
 「お前には、この家を」「ごめん、いらない」「えっ!?」…広大な実家を遺したい〈年金月20万円〉78歳父と、相続は全力拒否の50歳長男の攻防 (※写真はイメージです/PIXTA)

約5人に1人が「実家を相続したくない」現実

株式会社ネクスウィルが実施した「訳あり不動産実態調査」によれば、親が所有する不動産の相続意向について、子世代の19.2%、実に約5人に1人が「相続しない/相続したくない」と回答しました。

 

理由は「将来住むことはない」「現在地から遠い」と、健一さんの事情と重なるものが多くなっています。 一方で、親世代の63.6%が「(相続方針は)わからない」「家族にまかせる」と回答しており、親が「資産」として残したい実家を、子は「負担」と感じるという、意識のギャップが鮮明です。

 

このギャップが「空き家」や「所有者不明不動産」を生む温床。 調査では、4.2%が「亡くなった親名義のままの不動産がある」と回答しています。 2024年4月1日からは相続登記が義務化され、相続を知った日から3年以内に登記をしない場合、10万円以下の過料の対象になります。 放置すれば、健一さんが懸念するように、子が金銭的・法的な負担を負うことになるのです。

 

さらに、仮に兄弟姉妹など複数人で相続すれば「共有持ち分」の問題も発生します。 共有不動産は「共有者全員の同意」がなければ原則売却もできず、まさに「塩漬け」状態になりかねません。 実家が「資産」でなくなる前に、親が元気なうちの家族会議が不可欠だといえるでしょう。

 

[参考資料]

株式会社ネクスウィル『【約5人に1人が”相続を望まない”と回答】被相続人の63.6%が「相続未定」“実家”の相続に潜む課題とは | 訳あり不動産実態調査』