物価高や老後資金など、将来への不安が広がる現代。「貯蓄から投資へ」と踏み出すのは自然な流れかもしれません。 特に暗号資産は注目を集めていますが、そのリスクを正しく理解しているでしょうか。 資産を築くどころか、すべてを失う悲劇を避けるため、知っておくべき投資の実態と鉄則を解説します。
もう無理、貯金800万円が泡と消え、借金だけが残った…41歳独身女性が「暗号資産」にすべてを賭けた、悲惨すぎる顛末 (※写真はイメージです/PIXTA)

暗号資産投資の「実態」と、失敗しないための鉄則

金融庁の調査によれば、暗号資産の口座開設数は国内で延べ1,200万口座を超えるなど、投資対象として広く浸透してきていることがうかがえます。 一方で、その実態を見ると、いくつかの特徴が浮かび上がります。

 

また暗号資産保有者の約7割が年収700万円未満の中間所得層であり、個人口座の預かり資産額は「80%以上が10万円未満」と、多くの人が小口で取引しており、このように、多くの人にとって暗号資産は「少額から始められる投資」として認識されています。

 

田中さんが失敗したのは、この少額のラインを大きく踏み越えてしまったことにあります。 当初は「老後のため」という長期目線でしたが、焦りから短期的な利益追求にすり替わり、ハイリスクなレバレッジ取引に手を出してしまいました。

 

金融庁の「金融サービス利用者相談室」には、暗号資産に関する相談が多数寄せられており、その大半は「詐欺的な勧誘や取引」に関するものだといいます。 これは、市場そのものの価格変動リスクに加え、詐欺などのトラブルに巻き込まれる危険性も高いことを示唆しています。 これらの実態を踏まえ、暗号資産投資で失敗しないための鉄則は、極めてシンプルです。

 

第一に、「余剰資金」で投資すること。 生活費や将来のために確保しておくべき貯金(田中さんの場合の800万円)に手を付けるのは厳禁。 失っても生活に支障が出ない範囲の金額で行うのが大前提です。

 

第二に、「一発逆転」を狙わないこと。 「失った分を取り返そう」という焦りは、冷静な判断を奪い、さらなるリスクを呼び込みます。 借金をしてまで投資するのは論外です。

 

そして第三に、価格変動(ボラティリティ)が極めて高い資産であると認識すること。 短期間で資産が数分の一になる可能性も常にあると理解し、長期目線で付き合うか、もしくはリスクを許容できる範囲でのみ関わることが求められます。

 

老後への不安を解消するための投資が、現在の生活そのものを破壊してしまっては本末転倒です。

 

「いま思えば、交際相手への対抗心がどこかにあった。彼には負けたくないと……バカですよね。借金? ボーナスも使って返しました。 でも、もう投資はこりごりとは言いません。しっかりと自制して、将来を見据えて資産運用していきたいと思います」

 

[参考資料]

金融庁『事務局説明資料(ワーキング・グループにおけるこれまでの議論の整理)』(2025年11月7日公表)

、『事務局説明資料(暗号資産に係る規制の見直しについて)』(2025年9月2日公表)