(※写真はイメージです/PIXTA)
交際相手が暗号資産で大儲け。じゃあ自分もと…
「まさか、自分が借金まみれになるなんて、夢にも思っていませんでした」
都内の食品メーカーで事務職として働く田中美咲さん(41歳・仮名)。 田中さんは、この1年半ほどの間に、こつこつと貯めてきた貯金800万円のほぼすべてを暗号資産投資で失い、それどころか約100万円の借金を抱えることになりました。
「お付き合いする人はいても、昔から結婚に興味がなくて。一生、独身と腹を括って生きてきました。だから、頼れるのは自分だけと、給料から毎月決まった額を天引きで貯蓄してきました」
堅実そのものだった田中さんが、なぜハイリスクな投資にすべてを投じることになったのでしょうか。 きっかけは、40歳を迎えた頃に感じた「漠然とした不安」だったといいます。
「老後2,000万円問題など、将来を不安視するニュースを見るたびに、独身の自分がこのまま会社員を続けても……と、急に怖くなりました。 物価は上がる一方なのに、給料はなかなか上がらない。このまま貯金だけしていても、お金の価値が目減りしていくだけだと感じたんです」
そんな折、ちょうどお付き合いをしていた男性から、「暗号資産で数百万円儲かった」という景気のいい話を聞いたといいます。
「彼も同じような価値観の人で、結婚する気は一切なし。お互い、適度な距離感で付き合える人です。 そんな彼の話を聞いて、最初は『自分とは無関係の世界だ』と聞き流していたんですが、『もしかしたら、私にもできるかもしれない』、さらには『今投資をしないと、乗り遅れてしまうのではないか』と焦りを感じるようになりました」
田中さんはまず、お試しのつもりで30万円を入金。 運良く相場が上昇傾向だったこともあり、数週間で5万円ほどの利益が出ました。 「こんなに簡単なのか」と驚いたといいます。これが、転落の始まりでした。
「完全にビギナーズラックですよね。でもこのときは『もっと大きく賭ければ……』と、欲を出してしまったんです」
田中さんは堰を切ったように、貯金口座から500万円を暗号資産の口座へ移しました。 さらに、短期的な値動きで利益を出そうと、レバレッジ取引にも手を出します。 しかし、相場は田中さんの期待とは裏腹に急落。あっという間に含み損が膨らみました。
「頭が真っ白になりました。『ここでやめたら貯金が消える』『取り返さないと』その一心でした」
冷静な判断力を完全に失った田中さんは、いわゆる「ナンピン買い」を繰り返します。口座に残っていた500万円(と利益分)があっという間に溶けていく中なか焦って残りの貯金約270万円もすべて追加で投入しましたが、損失は膨らむ一方でした。
そして、ついに貯金が底を突いても「損失をどうにか取り返そう」と、カードローンで100万円をキャッシング。「これだけつぎ込めば、少し相場が戻っただけですべて取り返せる」と、自分に言い聞かせたのだとか。
しかし、その100万円も、わずか数日で市場に吸い込まれていきました。 気づいた時には、通帳の残高は数千円。 「もう無理!」と市場から撤退する時には、貯金800万円が消えたという現実と、毎月の返済だけが残ったといいます。