(※写真はイメージです/PIXTA)
年金8万円、質素な暮らしだった母の「違和感」
「母はいつも『私は大丈夫だから』が口癖でした。贅沢とは無縁で、着ているものも私が昔あげたセーターをずっと大切に着ているような……『お金がない、お金がない』などと言いながら、本当に質素な暮らしをしていました」
そう語るのは、八田陽子さん(52歳・仮名)。3ヵ月前、長年一人暮らしだった母・静江さん(享年80歳・仮名)を病で見送りました。 亡くなった父はずっと自営業で、陽子さんらが幼かったときは静江さんは専業主婦。子育てが一段落したあとは、パート勤めを長くしていました。そのため、年金は基礎年金が中心で月8万円だったと記憶しています。
「離れて暮らしていましたし、私にも家庭があるので、頻繁に帰省はできなかった。それでもたまに帰るときには『生活の足しにして』とお金を渡しても、『そんなことしないでいいの。子どもたち(静江さんにとって孫)のために使いなさい』と遠慮するばかりで」
葬儀が終わり、陽子さんは実家の遺品整理を始めました。予想通り、高価な家具や貴金属は見当たりません。まずは通帳や印鑑などを探すため、母が寝室で使っていた小さな金庫を開けました。
「そこには、メインで使っていたと思われる銀行の通帳が1冊入っています。残高は数十万円。やはり、年金8万円ではギリギリの生活だったんだなと、胸が苦しくなりました」
しかし、整理を進めると、客間の和ダンスの引き出し、仏壇の引き出し、神棚の裏から、計3冊の通帳を発見しました。そのなかには各300万円ずつ入っていました。
「えっ、こんなもの、いつの間に……」
合わせて1,000万円近い預貯金でした。厳しい生活のなか、どうやってこのようなお金を作ったのでしょうか。 さらに、本棚から見つけたのは日記帳。そのなかに、家族にあてたメッセージが残されていました。
そこには、(陽子さんが先に見つけてしまいましたが)通帳をしまっている場所、そのお金が老後を見据えて貯蓄してきたものであること、そして節約を心がけていたら使うことがなかったので(陽子さん含めた)3人の子どもたちに1冊ずつ通帳を残す旨が記されていました。
「お金がない、お金がないと言いながら、母は質素な暮らしをしていましたが、お金がないのではなく、あることを隠していたんですね。母は大嘘つきですね」