親が元気なうちに、実家を将来どうするか。 高齢化が進む日本で、誰もが直面しうる「実家じまい」の問題です。 しかし、デリケートな話題なだけに、親子間で具体的な話し合いを先送りにしている家庭は少なくありません。 いざという時、親の家をどうするのか。 調査データから、多くの家族が抱えるコミュニケーションの課題と、その重要性を考えます。
なぜこんな家、建てたんだ…環境抜群の郊外に「7,000万円」の広すぎる家。義両親とまさかの同居に、42歳夫の疲弊、深まる妻への疑念 (※写真はイメージです/PIXTA)

実家じまい…多くが「話し合ったことがない」

田中さんのケースは、妻の由美さんが主導する形で「実家じまい」と「同居」が一気に進んだ形です。 しかし、義両親が実家を閉じたように、親が住む家を将来どうするかという「実家じまい」の問題は、多くの子世代にとって無関心ではいられないはずです。

 

株式会社すむたすが実施した『実家じまいに関する親子間コミュニケーション調査』によると、実家の処分について親子間で「会話したことがない」と回答した人は72.1%。 その理由の多くは「まだ具体的に考えていないから」というものですが、田中さんの義母の体調不良のように、話し合いの必要性は突然やってきます。

 

この調査では、親世代の75.9%が「今の家に住み続けたい」と回答している一方で、子世代の3割以上が実家の老朽化(33.3%)を感じ、5割以上が「親の身体能力の変化」(55.6%)を懸念しているという実態も明らかになっています。

 

さらに深刻なのは、実家の処分方法に関する意向のギャップです。 親が亡くなったあと、親世代の30.6%が「子どもや親族に住んで欲しい」と望んでいるのに対し、子世代で「自身が住みたい」と回答したのはわずか13.5%に留まりました。 親は「いずれ子どもが住んでくれるかも」、子は「親は元気だし、まだ先のこと」と考えているうちに、互いの認識のズレが放置されてしまいます。

 

こうした話し合いの不足と認識のギャップこそが、将来的な空き家問題や相続トラブル、あるいは田中さんのように「突然の同居」による負担の集中という「まさか」の事態を招く火種となるのです。 親が元気で、判断力があるうちに、実家を将来どうするのかを家族で話し合っておくことが、将来のリスクを回避するために不可欠です。

 

「ローン返済負担は重いし、自分の家なのに気を使う生活は続くし……正直、相当な疲弊感です。 ただ、義両親が来てから、子どもたちは嬉しそうです。また、妻が安心した顔をしているのも事実です。 今は、義実家をどうするかという問題を解決することができたので、これで良しと考えるようにしています」

 

[参考資料]

株式会社すむたす『【実家じまいに関する親子間コミュニケーション調査】7割以上が『話し合ったことがない』と回答。理由は「まだ具体的に考えていない」が最多』