住宅ローンと教育費の「二重苦」。40代~50代の働き盛りにとって、家計のやりくりは大問題。給与が上がらないなかでの物価高も追い打ちをかけます。もし、そんな火の車の状況で、地方に住む親から「上京」を宣言されたなら……ある親子の例をみていきます。
 もう無理だ…〈手取り月38万円〉45歳のサラリーマン。ローンと学費で火の車だが、田舎の母の「上京宣言」に撃沈 (※写真はイメージです/PIXTA)

月38万円でも余裕なし…住宅ローンと教育費の「二重苦」

都内のメーカーに勤務する野田健介さん(45歳・仮名)。現在の役職は課長で、手取りの月収は約38万円だといいます。45歳で手取り38万円と聞けば、一見すると安定した生活を送っているように思えますが、その内情は厳しいものです。

 

「妻はパートで月8万円ほど稼いでくれていますが、それでも毎月カツカツです。ボーナスでなんとか帳尻を合わせている状況ですね」

 

野田さんの家計を圧迫している最大の要因は、10年前に購入した都内のマンションローンです。月々の返済は管理費なども含め約14万円。これだけで手取りの3分の1以上が消えていきます。

 

さらに重くのしかかるのが、中学1年生の長男と小学5年生の長女の教育費です。

 

「長男が私立中学に進学したため、学費だけで月々かなりの額になります。下の子も中学受験を考えていて、塾代が馬鹿になりません。子どもたちの将来を考えると、教育だけは妥協したくないのですが……」

 

子どもたちに関連する費用以外は極力節約し、健介さん自身の小遣いも切り詰めている日々です。しかし、近年の物価高がさらに追い打ちをかけます。

 

「食費も光熱費も、数年前に比べて明らかに上がっています。給料はそこまで上がらないのに、出ていくばかり。正直、もう無理かもしれない、と感じることは少なくありません」

 

まさに「火の車」の家計を前に、夫婦の会話も最近は暗くなりがちでした。そんな矢先、健介さんを追い詰めるような出来事が勃発します。

 

地方で1人暮らしをしていた母・良子さん(76歳・仮名)からの、一本の電話。「田舎の1人暮らしは不安。だから実家を売って、お前たち(健介さん家族)のいる東京に出てくることに決めた」というものでした。

 

3年前に夫(健介さんの父)を亡くし、以来、1人暮らしを続けてきました。最近、足腰が弱ってきたとは聞いていましたが、まさか「上京宣言」が出るとは思ってもみなかったといいます。

 

「母の決断には、とにかく驚きました。上京するって、住むところは? 生活費は? まだ思いついた段階で、何も決まってない。うちに来るつもりなのかもしれませんが、今のマンションに母の部屋はありません。だからといって、わざわざ家賃の高い東京で家を借りるなんて……なんて無意味な」

 

電話を切った後、妻の優子さんに恐る恐る伝えると、優子さんは何も言わずに深いため息をついただけでした。その沈黙が、さらに健介さんを追い詰めます。住宅ローンと学費の二重苦に加え、迫りくる親の生活の問題。健介さんは、まさに進退窮まった心境だったと語ります。