80代の親と、定職に就かない50代の子が同居し、生活が立ち行かなくなる。こうした「8050問題」が、今や深刻な社会問題となっています。親が元気なうちは年金や貯蓄で生活が維持できても、親亡き後、子の生活基盤は失われてしまいます。当事者はどのように問題を解決を目指すのか。ある親子のケースをみていきます。
どうせ俺の金になるんだろ…働かない52歳息子の哀れな末路。〈年金月18万円〉〈貯金2,000万円〉、83歳父の「決死の覚悟」 (※写真はイメージです/PIXTA)

深刻化する「8050問題」と、子の将来

高齢の親(80代)と、働かずに同居する中高年の子(50代)の生活が、社会的に孤立し、困窮する「8050問題」が深刻化しています。

 

内閣府『こども・若者の意識と生活に関する調査』では、40歳から64歳の中高年層における「ひきこもり状態」(趣味の用事の時だけ外出する、近所のコンビニなどには出かける、自室からは出るが家からは出ない、自室からほとんど出ない状態が6ヵ月以上続いている)は2.05%存在すると推計されています。

 

また、同調査で40歳から64歳のひきこもり状態にある人に、そのきっかけを尋ねたところ、「退職したこと」が最も多く、次いで「人間関係がうまくいかなかった」「病気」などが続きます。

 

達也さんのように、一度社会のレールから外れたことをきっかけに、長期にわたり社会との接点を失ってしまうケースは少なくないのです。

 

問題は、親が元気なうちは、親の年金や貯蓄によって生活が成り立ってしまう点にあります。

 

しかし、その親が亡くなったとき、経済的な基盤を失った子が、どう生活していくのか。一郎さんのように、子の将来を案じ、「あえて財産を残さない」という苦渋の決断を考える親も増えているのかもしれません。

 

親が自身の財産をどう処分するかは、子の生活を支える責任とは別の問題として、法的には自由です(ただし、遺留分などの考慮は必要です)。

 

一郎さんの「決死の覚悟」は、働かない息子への最後のメッセージとなるのでしょうか。しかし、そのメッセージが届くかどうかは、誰にも分かりません。

 

[参考資料]

内閣府『こども・若者の意識と生活に関する調査』