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深刻なギャップ…親の7割「住み替えない」VS子の認識
リコーリース株式会社が、65歳以上の親世代とその子世代(40~59歳)を対象に実施した『シニア世代の今後の住まいに関する意識調査』では、田中さん親子のような「親子の認識ギャップ」が浮き彫りになりました。
親世代に今後の住まいについて尋ねたところ、実に73.0%が「住み替えるつもりはない」と回答。多くの親世代が、長年住み慣れた我が家を「終の棲家」と定めています。一方、子世代に「親は今後の住まいをどう考えていると思うか」と推測してもらったところ、「(親は)住み替えるつもりはない」と予測した割合は53.6%に留まりました。
親の実感(73.0%)と、子の推測(53.6%)。ここには約20ポイントものギャップが存在します。良一さんのように、子は「いつかは住み替えるかもしれない」と淡い期待を抱いているか、あるいは和夫さんのように、親の「絶対に動かない」という固い意志を、まだ知らないまま過ごしている可能性が高いのです。
なぜ、これほどのギャップが生まれるのでしょうか。調査は「話し合いの不足」を明確に示しています。
「今後の住まいについて、どの程度話し合ったか」という問いに対し、「話をしたことがないが、機会があれば話したい」「今後も話す予定はない」を合計すると、親世代の58.1%、子世代の51.5%が、現時点で「話し合いの経験がない」ことが判明しました。
「親の老い」や「将来の介護」、「実家」といった話題は非常にデリケート。親は「子どもに迷惑をかけたくない」と思い、子は「まだ元気な親に老後の話をするのは失礼ではないか」と遠慮する――互いが本音を切り出せないまま、時間が過ぎていく実態が見えてきました。
仮に「住み替え」が話題にあがったとしても、親子の意向は異なる可能性が高いようです。住み替え意向を持つ親世代が希望する住居形態は、「持ち家(買い替え含む)」(38.8%)が最多。高齢になってもなお、住まいを「所有」することへのこだわりがうかがえます。一方、親の住み替えを想定する子世代は、「持ち家」(28.6%)と並び、「介護付き施設」(26.4%)、「シニア向け賃貸住宅」(23.6%)がほぼ同率です。子は、親の意向とは裏腹に、将来の介護負担の軽減や、見守りサービスの充実といった施設や賃貸を有力な選択肢に入れています。
意向には大きなギャップがあることを前提に、親が元気なうちに、冷静に話し合う時間を設けること、そして「そのうち」ではなく、「今」話し合うこと。それが、親子共に納得のいく結論を出すために必要です。
[参考資料]