「買い物依存症」とは、買い物という行為そのものに心を奪われ、コントロールできなくなる状態です。買った瞬間の高揚感だけが目的となり、手に入れた物には興味を失う。そして、すぐに次の買い物のことで頭がいっぱいになり、後悔と衝動買いを繰り返す……。買い物依存は、アルコールやギャンブルと同じように人生を破壊しかねない問題でありながら、見過ごされがちな恐ろしさがあることにまだ多くの人は気がついていないようです。
20代フリーターから“玉の輿”。「年収1,500万円夫」と「都心に8,200万円の新築一戸建て」を手に入れた妻が、45歳現在は年収320万円の実家暮らし…結婚生活が破綻した驚愕理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

氷河期世代の苦悩と、エリート夫との出会い

ナナミさん(仮名)は、大学卒業後、希望する企業への正社員就職は叶わず、フリーターとしてアルバイトを転々とする不安定な20代を過ごしました。「自分だけが社会から取り残されているような感覚」と、ナナミさんは当時を振り返ります。

 

そんな彼女の人生が大きく変わったのは、30歳を目前にしたころ。友人の紹介で出会ったのが、2つ年上の商社マン、シュンヤさん(仮名)でした。年収1,500万円を超えるエリートのうえ、誠実な人柄。ナナミさんは、シュンヤさんと出会えたことを「奇跡」だと感じました。

 

交際は順調に進み、ナナミさんが30歳のときに結婚。ナナミさんは仕事を辞め、専業主婦となりました。「これで、もうお金の心配をしなくていいんだ」長年の不安から解放された安堵感と、今後の生活への期待で、ナナミさんの心は満たされていました。

 

新築、高級車…満たされる物欲と、心の“隙間”

結婚後、シュンヤさんは都心に8,200万円の新築戸建てを購入。ナナミさんはインテリアを選び、最新の家電を揃え、理想の家庭を築くことに夢中になりました。シュンヤさんは仕事が多忙でしたが、優しい夫であり、ナナミさんの望むものはほとんど買ってくれました。

 

「本当に幸せでした。欲しかったものがなんでも手に入る。まるで夢のようでした」

 

しかし、いつしかナナミさんの買い物はエスカレートしていきます。最初は、素敵な食器や雑貨を集めるに留まっていましたが、次第にブランド物のバッグや洋服へ。限定品や新作が出るたびに手を出してしまうのです。ブランド物だけでなく、テレビや雑誌でみた便利グッズなど、一つひとつの価格は小さなものでも、欲しいと一度思うとその衝動を抑えられず、気づけば部屋は開封すらしていない箱で溢れかえっていきます。

 

「買う瞬間だけが、すごく満たされるんです。でも、手に入れた途端に興味がなくなって、また次のものが欲しくなる。買ったあとはいつも、『またやってしまった』って自己嫌悪に陥るのに、やめられない……」

 

ナナミさんは、心のどこかで虚しさを感じていました。シュンヤさんは多忙で、家にはほとんど寝に帰るだけ。息子(当時14歳)も思春期を迎え、会話は減っていました。

 

「お金はある。物もある。でも、なにかが足りない」その“心の隙間”を埋めるように、ナナミさんは買い物を繰り返していったのです。