(※写真はイメージです/PIXTA)
氷河期世代の苦悩と、エリート夫との出会い
ナナミさん(仮名)は、大学卒業後、希望する企業への正社員就職は叶わず、フリーターとしてアルバイトを転々とする不安定な20代を過ごしました。「自分だけが社会から取り残されているような感覚」と、ナナミさんは当時を振り返ります。
そんな彼女の人生が大きく変わったのは、30歳を目前にしたころ。友人の紹介で出会ったのが、2つ年上の商社マン、シュンヤさん(仮名)でした。年収1,500万円を超えるエリートのうえ、誠実な人柄。ナナミさんは、シュンヤさんと出会えたことを「奇跡」だと感じました。
交際は順調に進み、ナナミさんが30歳のときに結婚。ナナミさんは仕事を辞め、専業主婦となりました。「これで、もうお金の心配をしなくていいんだ」長年の不安から解放された安堵感と、今後の生活への期待で、ナナミさんの心は満たされていました。
新築、高級車…満たされる物欲と、心の“隙間”
結婚後、シュンヤさんは都心に8,200万円の新築戸建てを購入。ナナミさんはインテリアを選び、最新の家電を揃え、理想の家庭を築くことに夢中になりました。シュンヤさんは仕事が多忙でしたが、優しい夫であり、ナナミさんの望むものはほとんど買ってくれました。
「本当に幸せでした。欲しかったものがなんでも手に入る。まるで夢のようでした」
しかし、いつしかナナミさんの買い物はエスカレートしていきます。最初は、素敵な食器や雑貨を集めるに留まっていましたが、次第にブランド物のバッグや洋服へ。限定品や新作が出るたびに手を出してしまうのです。ブランド物だけでなく、テレビや雑誌でみた便利グッズなど、一つひとつの価格は小さなものでも、欲しいと一度思うとその衝動を抑えられず、気づけば部屋は開封すらしていない箱で溢れかえっていきます。
「買う瞬間だけが、すごく満たされるんです。でも、手に入れた途端に興味がなくなって、また次のものが欲しくなる。買ったあとはいつも、『またやってしまった』って自己嫌悪に陥るのに、やめられない……」
ナナミさんは、心のどこかで虚しさを感じていました。シュンヤさんは多忙で、家にはほとんど寝に帰るだけ。息子(当時14歳)も思春期を迎え、会話は減っていました。
「お金はある。物もある。でも、なにかが足りない」その“心の隙間”を埋めるように、ナナミさんは買い物を繰り返していったのです。