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高齢期の「住み替え」と「ルールの明確化」
高齢期を迎え、住まい方を見直すケースは珍しくありません。内閣府『令和6年版高齢社会白書』によれば、65歳以上の持ち家比率は76.2%。一方で、現在の住宅の問題点を尋ねたところ、「何も問題点を感じていない」と回答した人が最も多く31.0%。逆の見方をすると、7割が何かしら問題を抱えていることがわかります。
問題点として最も多く挙がったのが「住まいが古くなり、いたんでいる」で、全体の29.8%。「地震、風水害、火災などの防災面や防犯面で不安がある」、「断熱性や省エネ性能が不十分」、「家賃や税金、住宅維持費など住宅に関する経済的負担が重い」、「階段や段差等があり使いにくい」と続きました。
これらの住まいの問題点を解消する方法として有効なのが「住み替え」。そして住み替え先のひとつとして、子世帯との同居という選択肢があります。親と同居する世帯の割合は長期的に減少傾向にありますが、経済的な理由や安心感を求めて同居を選ぶ家庭も依然として多くいます。
国立社会保障・人口問題研究所『第7回全国家庭動動向調査』によると、いずれかの親と同居している割合は2022年で15.6%。裕子さんと同じ妻が40代に限定すると、14.4%。妻の父親と同居している割合は4.0%、妻の母親は4.7%、夫の父親は6.0%、夫の母は9.1%。妻の立場では、自身の親より、夫の親と同居している割合が高くなっています。
同居には、互いの安否確認ができる安心感や、経済的・家事的な負担軽減といったメリットがある一方で、価値観の違いや生活リズムのズレ、プライバシーの確保の難しさといったデメリットも伴います。特に「嫁姑」という関係性は、距離感が近すぎることで、かえってストレスを生みやすい側面があります。
裕子さんが「関係性を壊したくないからこそ」と提示した3ヵ条は、同居生活を円滑に進めるうえで重要な視点です。金銭的な分担、プライベート空間の確保、そして最もデリケートな「将来の介護」の問題。これらを同居開始前に曖昧にせず、親子間で明確にルール化しておくことこそが、「好きだったはず」の義両親との関係を守ることに繋がりそうです。
「私からの提案に夫は伝えにくそうでしたが、お義父さんもお義母さんも意外にノリノリで。話はスムーズに進んでいきました。以前よりかなり距離は近くなりましたが、敷地内同居のメリットを感じているところです」
[参考資料]
内閣府『令和6年版高齢社会白書』
国立社会保障・人口問題研究所『第7回全国家庭動動向調査』