(※写真はイメージです/PIXTA)
「客間、あまってるじゃないか」夫の無邪気な一言
「夫の両親とは良好な関係でした」
そう語るのは、黒坂裕子さん(42歳・仮名)。夫の健一さん(47歳・仮名)と、中学1年生の娘と3人で、とある地方都市に暮らしています。健一さんの月収は約45万円。裕子さんもパートとして働き、家計を支えていました。波風が立ったのは、今年の春先のこと。車で2時間ほど離れた地域に住む、健一さんの両親の住み替え問題が起きたといいます。
「義実家のある地域は、山の向こうなので雪が多くて。高齢の義両親にとって、毎年の雪かきは重労働になっていました。数年前から『そろそろ、この家を売って、街なかの集合住宅にでも移ろうか』という話は出ていたんです」
義両親も前向きに検討していたはずの「住み替え」。ところが、健一さんから思いもよらない提案が飛び出しました。
「うちで一緒に住めないかな。客間もあまっているし、こっちは雪も少ない。そのほうが安心できるし」
裕子さんにとっては、まさに寝耳に水でした。義両親との関係は、これまで非常に良好。それは適度な距離感にいるからに他なりません。しかし同居となれば話は別。せっかく築き上げた関係が、根底から崩れてしまうかもしれません。
「イヤ、同居だけは、絶対イヤ!」と、思わず声を荒げてしまったという裕子さん。しかし、健一さんは「親孝行だ」「困っているんだから助けるのが当たり前」と乗り気です。
「夫は長男ですし、親を思う気持ちはわかります。でも、私だって自分の生活を守りたかった……」
悩んだ末、裕子さんは「もし、どうしても同居するというのなら」と、健一さんにいくつかの条件を提示することにしました。
「住み替えに関しての決定権は義母にあるようなので、夫に伝えてほしい同居の条件を話しました。まず、どうしても同居というなら、義実家を売却した費用で、この敷地の庭に、お義父さんとお義母さんが住む『別棟』を建築すること、これが絶対条件だと。予想外の提案に夫は言葉に詰まっていました」
黒坂さん家族が住む母屋とは、玄関も、キッチンも、お風呂も、すべて別にした完全分離の建物を建てる。それが、これまでの良好な関係を守るための最低限のラインだと、裕子さんは主張したのです。さらに「お互いのプライベートに関与しないこと」、そして「将来、介護が必要になったときの方針を事前に決めておくこと」といった条件を提示。
「この3つの条件が飲めないなら、私はこの家を出ていくと伝えました」