「自分は高収入だから年金も多いはず」と考えるのは早計かもしれません。年金受取額には「上限」が存在します。どれだけ月収が高くても、一定額以上は年金額に反映されない仕組みなのです。多くの人が見落としがちな年金の仕組みについてみていきましょう。
サラリーマンの上位1%だったが…〈月収100万円〉50歳男性、〈ねんきん定期便〉の年金見込み額に「うそだろ…」と唖然 (※写真はイメージです/PIXTA)

高収入でも「青天井」ではない、年金額の仕組み

加藤さんのような高収入の方が年金見込み額を見たときに「意外と少ない」と感じる背景には、厚生年金の保険料と年金額の計算の仕組みがあります。

 

キーとなるのは「標準報酬月額」です。

 

会社員の厚生年金保険料は、毎月の給与(基本給や手当など)を一定の範囲で区分した「標準報酬月額」を基に計算されます。そして、この標準報酬月額は、将来の年金額(厚生年金の報酬比例部分)を計算する上でも基礎となります。

 

重要なのは、この標準報酬月額には上限があるということです。2025年現在、標準報酬月額の上限は第32等級の「65万円」です。つまり、加藤さんのように月収が100万円(あるいはそれ以上、たとえば200万円)あっても、厚生年金の計算上は「月収65万円」として扱われるのです。賞与(標準賞与額)にも年間150万円という上限があります。

 

保険料の負担も65万円を基にした額で頭打ちになりますが、同時に、将来受け取る年金額も「月収65万円の人」と同じ計算で頭打ちになります。

 

収入額に比例して、年金額が「青天井」で増え続けるわけではないのです。

 

現在、20歳から60歳まで会社員として働いたとしたら、理論上、年金の最高額は、老齢基礎年金と老齢厚生年金を合わせた金額で月30万円強とされています。

 

確かに、月収100万円を超えるようなエリートでも、どんなに頑張っても年金月30万円強というのは、「少ない」と感じるかもしれません。

 

そんな「標準報酬月額」ですが、賃金が上昇傾向にあることを踏まえ、上限が2027年9月に68万円、2028年9月に71万円、2029年9月に75万円と、段階的に引き上げられます。また賃金などが月75万円以上の場合、保険料(本人負担分)は月9,100円(社会保険料控除を考慮すると月約6,100円)上昇。仮にその状態が10年続くと、月約5,100円増額した年金を一生涯受け取れることになるといいます。

 

現役時代の収入に見合った年金を受け取れるようになる改正ではありますが、それでも「年金だけで老後は大丈夫」というわけではありません。「ねんきん定期便」などを参考にし、それぞれがどのような老後を実現したいか、それにはどれほどの貯蓄が必要となるのか、その貯蓄を実現するにはどのように資産形成を進めていけばいいのか――各々がしっかりと考えることが大切です。

 

[参考資料]

日本年金機構『大切なお知らせ、「ねんきん定期便」をお届けしています』、『厚生年金保険料の計算方法について』

厚生労働省『厚生年金等の標準報酬月額の上限の段階的引上げについて』