一家の大黒柱を突然失った場合、残された家族の生活はどうなるのでしょうか。たとえば、手取り40万円の世帯でも、遺族年金だけでは生活が厳しくなる現実があります。果たして、遺族年金は一体いくら受け取れるのか? その仕組みと、具体的な試算額をみていきます。
〈手取り40万円〉45歳会社員夫、事故死…遺族年金額をみた42歳妻「悲しむ暇もない」と言いきるワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

手取り40万円世帯の「遺族年金」…驚きの試算額

久美子さんのように、家計を支える現役世代の会社員が亡くなった場合、残された家族は一体いくらの遺族年金を受け取れるのでしょうか。

 

遺族年金は、主に「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2階建て構造になっています。

 

1.遺族基礎年金

国民年金に由来する遺族年金で、亡くなった方に18歳到達年度の末日までの子(または20歳未満で障害等級1級・2級の子)がいる場合に、その配偶者または子に支給されます。

 

久美子さんの家庭には中学生と小学生の子が2人います。日本年金機構が公表している令和7年度の年金額で試算すると、以下のようになります。

 

基本額(配偶者分):83万1,700円 子の加算額:23万9,300円×2人=47万8,600円 合計(年額):131万0,300円(月額 約10.9万円)

 

ただし、この遺族基礎年金は、末の子が18歳になった年度の3月31日を過ぎると支給が停止されます。

 

2.遺族厚生年金

亡くなった人が厚生年金の被保険者であった場合に支給されます。金額は、亡くなった人の生前の収入(平均標準報酬額)や厚生年金の加入期間に基づいて計算されます。

 

誠さんの手取り月40万円から、額面年収を約600万円(平均標準報酬月額50万円)と仮定します。また、厚生年金加入期間が300ヵ月(25年)未満の場合は、300ヵ月とみなして計算する特例があります。

 

この条件で計算すると、遺族厚生年金の受給目安は以下のようになります。

 

合計(年額):約61.7万円(月額 約5.1万円)

 

久美子さんが受け取れる遺族年金は、遺族基礎年金と遺族厚生年金を合わせて、 月額約16万円(約10.9万円+約5.1万円) となります。

 

誠さんの手取り月40万円に対し、遺族年金は約16万円。その差は月額24万円になります。ほかにも児童扶養手当など、国や自治体の公的制度から支給されるお金もありますが、誠さんの収入には到底及びません。

 

公益財団法人 生命保険文化センター『2024(令和6)年度生命保険に関する全国実態調査』によると、世帯主に万一のことがあった場合、残された家族が必要と考える1年間の生活資金は平均で354万円(月額約29.5万円)、必要年数は平均17.3年。総額にすると6,283万円です。 久美子さんのケースでは、遺族年金の年額は約192万円であり、この平均的な必要額にも大きく届かないのが現実。仕事をするというのが、最も確実な方法といえるでしょう。

 

久美子さんが「悲しむ暇なんてありませんでした」と語る背景には、夫を失った深い悲しみと同時に、月24万円もの収入減という厳しい経済的現実を直視し、すぐにでも生活を立て直さなければならないという切実な焦りがあったのです。

 

[参考資料]

日本年金機構『遺族年金』

公益財団法人 生命保険文化センター『2024(令和6)年度生命保険に関する全国実態調査』