高齢者の社会的孤立が、深刻な問題となっています。現役時代は多くの同僚や友人に囲まれていても、定年退職などをきっかけに関係が途絶え、気づけば話し相手もいない……なぜ人は社会とのつながりを失ってしまうのでしょうか。高齢者の孤立の実態と、豊かな老後を送るために今からできる備えについて考えていきます。
なんで誰も来ないんだ…82歳で逝った元教員の伯父。「立派な葬儀」のはずが想定外、閑散としていたワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

他人事ではない高齢者の孤立

内閣府『令和5年版高齢社会白書』によると、60歳以上の人のうち「親しい友人はいない」と回答した人の割合は6.5%。また、日頃の近所付き合いの程度について尋ねた調査では、「あいさつをする程度」が最も多く43.1%、「つきあいはほとんどない」が21.6%となっており、合わせると6割以上が、近隣住民と深い交流を持っていないことがわかります。

 

現役時代の社会的地位や人間関係が、必ずしも老後の生活の支えになるとは限りません。大輔さんの伯父、昭さんのケースのように、かつての人間関係が時間とともに希薄化していくことは、誰にでも起こりうることです。

 

高齢者の孤立化は、孤立死リスクを高めます。2024年、警察が取り扱った1人暮らしで自宅で亡くなった人は全国で約7.6万人で、そのうち65歳以上は約5.8万人。さらに死後8日以上経過して発見され、生前社会的に孤立していたと推測される「孤立死」は約2.1万人でした。

 

老後の孤立を防ぐためには、意識的に社会との接点を持つ努力が不可欠です。地域の趣味のサークルやボランティア活動に参加する、習い事を始めるなど、退職後も新しいコミュニティに身を置くことが有効でしょう。家族や親戚とのコミュニケーションを大切にすることも、もちろん重要です。

 

[参考資料]

内閣府『令和5年版高齢社会白書』、『「孤独死・孤立死」の実態把握に関するワーキンググループ資料』