(※写真はイメージです/PIXTA)
子への過剰な責任感が「老後破産」の引き金に
総務省の「国勢調査」によると、2020年、親と同居の未婚者の数は、45~54歳で約300万人。彼らのすべてが親に依存しているわけではありませんが、ひとたび和樹さんのように失業や離婚といった事態に直面すると、生活基盤の脆弱さから、高齢の親に頼らざるを得ない状況になるでしょう。
高齢の親と、その子どもの生活。さらに、この先、「親自身の介護問題」に直面する可能性も。厚生労働省『2022年 国民生活基礎調査』によると、介護が必要となった主な原因は「認知症」が最も多く、次いで「脳血管疾患」「高齢による衰弱」と続きます。認知症のリスクは年齢とともに急激に高まり、特に75歳以降でその有病率が大きく上昇。65~69歳で約1.5~3.8%ですが、80~84歳では男性16.8%、女性24.2%、95歳以上では男性50.6%、女性83.7%に達します。
介護には当然、費用がかかります。生命保険文化センターの調査では、介護にかかる費用は、住宅改修や介護用ベッドの購入など一時的な費用として平均47.2万円、月々の費用として平均9.0万円。平均的な介護期間が約5年とされており、単純計算で総額500万円以上の備えが必要になる可能性もあるのです。
このまま京子さんが息子のために貯金を使い果たしてしまえば、いざ自分が介護を必要としたとき、その費用を捻出することはできません。その負担は、結果的に誰に向かうのか……経済的に自立できていない和樹さんに、その重荷がのしかかることになります。そうならないためにも、現在の負の連鎖は断ち切らないといけないでしょう。
「このままではいけないことはわかっていますが、心を鬼にするのは難しいですね。いくつになっても、子どもは子どもなので……」
[参考資料]
総務省『国勢調査』
厚生労働省『2022年 国民生活基礎調査』
生命保険文化センター『生命保険に関する全国実態調査[2人以上世帯]/2024(令和6)年度』