(※写真はイメージです/PIXTA)
決断、未来への責任
「お父さん、お母さん。先祖への思いは十分承知しているよ。でも、土地を守ることで、お父さんたちの健康や、私たち子世代の未来を犠牲にするわけにはいかないよね」
「現状維持は、もう限界。私たちの体力が持たないよ」と、翔太さんの母親が初めて強い口調でいいました。「そうだな……」翔太さんの父親は、地図の上に広げられた広大な土地を、複雑な面持ちでみつめていました。
沈黙を破ったのは父親のひと言でした。
「翔太、菜摘。わしらの代で、この土地の負の側面は清算しよう。将来の負債を子どもたちに残すのは、親として本意ではない」
父親は、ついに決断したのです。
「まずは、専門業者に売却の可能性を探ってもらおう。ダメなら、国庫帰属制度についても、行政書士に相談して、条件に合うか調査してもらってくれ」
「わかりました」翔太と菜摘は、安堵の表情をみせました。
これは、広大な土地を「手放すための終活」の始まりです。売却益は期待できません。それよりも、長年家族を縛り続けてきた「広すぎる土地の管理責任」という重圧から解放されることこそが、なによりも大きな利益となるでしょう。
家族会議は、「先祖への義理」よりも、「家族の健康と未来」を優先するという、現代的な決断で締めくくられました。利用価値を見出せない「負」動産の終活は、こうして一歩を踏み出したのです。この決断が、阿部家の未来を確実に軽くするはずです。
〈参考〉
法務局
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00590.html
国土交通省 P2
https://www.mlit.go.jp/common/001201306.pdf
政府広報オンライン 1所有者不明土地とは?
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202203/2.html
藤原 洋子
FP dream
代表FP