長年連れ添ったパートナーの死は、深い悲しみだけでなく、時に想定外の事実をもたらすことがあります。それは、感情だけでは割り切れない遺産相続という現実的な問題に直結します。法律は「まさかの事態」に対して、どのように定めているのでしょうか。
今では笑い話だけどねぇ…〈年金月14万円〉でも〈時給1,280円〉で働き続ける72歳女性、結婚50年の夫の葬式で目撃した「まさかの光景」 (※写真はイメージです/PIXTA)

法律は感情とは別に「子の権利」を認めている

相続において隠し子が発覚する。まるでドラマのような出来事は、珍しい話ではありません。こうした事態に直面したとき、遺産相続は法律に基づいてどのように進められるのでしょうか。

 

まず最も重要なのが、亡くなった人と子の間に法律上の親子関係が成立しているか、という点です。婚姻関係にない男女の間に生まれた子(非嫡出子)の場合、父親が「認知」をすることで法律上の親子関係が成立します。認知は生前に行うことも、遺言によって行うことも可能です。この認知がなされていれば、その子は相続人としての権利を持つことになります。

 

次に、相続分の割合です。かつて、非嫡出子の法定相続分は、婚姻関係にある夫婦の間に生まれた子(嫡出子)の半分とされていました。しかし、この規定は法の下の平等に反するとして、2013年9月4日に最高裁判所が違憲であるとの決定を下しました。これを受け、民法が改正され、現在では非嫡出子の相続分は嫡出子と完全に同等となっています。

 

法定相続分の基本的なルールは、相続人が配偶者と子の場合、配偶者が2分の1、残りの2分の1をすべての子で均等に分け合うことになります。

 

恵子さんのケースでは、夫婦の間に子がおらず、夫が認知した子が1人いたため、配偶者である恵子さんが2分の1、子が2分の1を相続することになりました。もし、恵子さんと夫の間にも子どもが1人いた場合は、配偶者の恵子さんが2分の1、残り2分の1を2人の子どもで分けるため、それぞれ4分の1ずつの相続分となります。

 

長年連れ添った配偶者の裏切りに対する感情的なショックは計り知れません。しかし、遺産相続は個人の感情とは切り離され、法律のルールに則って進められます。子の出自によって相続において差別されない、という法的な要請があることも、こうした万が一の事態に備えるうえで知っておくべき知識といえるでしょう。

 

[参考資料]

厚生労働省『令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』

法テラス『遺産分割に関するよくある相談』