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介護費用月30万円。年収500万円の長女が追い詰められた現実
田中美紀さん(仮名・49歳)。老人ホームに入居する母・京子さん(仮名・79歳)の費用負担に心身ともに追い込まれていたといいます。
「月によって多少は変わりますが、ある月は居住費・管理費が20万円、食費が5万円、介護サービス費が2万5,000円、ほかおむつ代や理容費などが1万5,000円。29万円ほど。昨今の値上げで、月3万円ほど、費用が増えました」
京子さんの年金や貯蓄だけでは費用を賄うことはできず、美紀さんが月8万円ほど負担しているといいますが、年収500万円ほどだという美紀さんには大きな負担でした。もう限界だと感じ、兄・悟さん(仮名・53歳)に相談したことは一度や二度ではありません。しかし、返ってくるのは「忙しい」「金がない」といった言葉ばかり。そして、ついに限界を迎えかけていました。
「今よりも費用負担の少ない施設に転居させることも考えました。しかし、母の負担を考えると、二の足を踏んでしまう。そこで、実家を売却して、当面の費用に充てられないかと兄に相談したんです」
その相談が、それまでの兄妹関係を崩壊させることになります。美紀さんが悟さんに切り出すと、思いもしない返答がありました。
「あの家はすでに生前贈与を受けて、名義変更を済ませてある。もう俺のものなんだ。だから固定資産税だって俺が払っている。お前が施設に入れると段取りしたんだから、費用くらいなんとかしろ」
衝撃的な事実に、言葉が出なかったという美紀さん。何とか出てきたのは「うっ、嘘でしょ……」という言葉だけでした。兄は親から金銭的な優遇を受ける一方で、介護負担を妹に押し付けていたのです。
「固定資産税といっても、1年で10万円くらいですよ。私の1カ月分。それを盾に『介護費用はお前がどうにかしろ』って……一体どういう神経をしているのでしょうか」