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「空の巣」と「濡れ落ち葉」…定年後に夫婦を襲う二つの危機
子どもが成長して巣立ち、親が「自分の役割が喪失した」と感じて孤独や喪失感に襲われる状態である「空の巣症候群(エンプティ・ネスト・シンドローム)」。さらに「夫の定年退職」という大きな人生の節目が重なるとき、夫婦関係も変化することがあります。
厚生労働省『人口動態統計』によると、同居期間20年以上の夫婦の離婚、いわゆる「熟年離婚」の件数は、全離婚件数の約2割を占め、長年高い水準で推移しています。子育てという共通の目的を失う「空の巣症候群」のタイミングと、夫の定年で「会社員の妻」でもなくなったタイミング。ここで、自分自身の人生を考え直し、離婚という選択肢が現実味を帯びてくるケースもあるでしょう。
ソニー生命保険株式会社『シニアの生活意識調査2024』でも、高齢夫婦の意識の差は明らかです。配偶者がいる高齢者に「老後も配偶者と一緒に暮らしたいと思うか」聞いたところ、「そう思う(計)」は85.1%。これを男女別にみると、「そう思う(計)」と回答した人の割合は、男性は92.5%に対し、女性は77.2%と、女性のほうが15.3ポイント低くなっています。夫婦観について、男女間で意識のギャップがみられる結果となりました。
このような意識差を乗り越えるためにも、大切なのは定年前からの夫婦間の対話。定年後の生活について、お互いが何をしたいのか、一人の時間をどう尊重するのか、家事をどう分担するのか——新たな関係性を築くための「すり合わせ」を事前に行うことこそが、定年後の危機を乗り越えるための唯一の方法といえるでしょう。
[参考資料]
厚生労働省『令和5年 人口動態統計月報年計(概数)の概況』