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亡き父の仏壇から…現れた謎の通帳
「父は、本当に倹約家で、贅沢をしているところなど見たことがありませんでした。着ているものはいつも同じだし、食事も毎度、懐石料理かと思えるほど素朴なもので、趣味らしい趣味もなくて……」
江崎浩一さん(45歳・仮名)は、半年前になくした父・義雄さん(享年82歳・仮名)のことをそう振り返ります。収入は年金がすべてだったという義雄さん。受取額は月13万円ほどで、持ち家で1人暮らしだったため、生活に困窮している様子もなかったといいます。
その日、浩一さんは兄と共に、義雄さんが暮らしていた実家の遺品整理に追われていました。タンスや押し入れの整理が一段落し、最後に手をつけたのが、リビングに置かれた立派な仏壇でした。
「線香やロウソクが入っている引き出しを整理していたときです。奥のほうに、布にくるまれた硬いものがあるのに気づきました」
取り出してみると、それは古びた銀行の通帳でした。何気なくページをめくった浩一さんは、息をのみます。最終残高の欄に印字されていたのは、目を疑うような数字。「50,000,000」。ゼロの数を何度も数え直しましたが、間違いありません。5,000万円という大金でした。
年金暮らしだった父からは、到底想像もつかない金額です。驚きと、正直なところ一瞬の喜び。しかし、次に心によぎったのは、「なぜ?」という大きな疑問符でした。
遺言書はありませんでした。手がかりを求め、父が几帳面につけていた日記を読み返しましたが、お金に関する記述はひと言もありません。生前親しくしていたという数人の友人に尋ねても、「義雄さんから金の話なんて聞いたこともない」と誰もが口を揃えるばかり。
どこから得たお金なのか。なんのために貯めていたのか。なぜ、家族にひと言も伝えなかったのか――考えれば考えるほど、浩一さんの頭にはよからぬ想像が浮かんできます。
「まさか、誰にも言えないような方法で……」
質素で真面目だった父のイメージが、ガラガラと音を立てて崩れていくような感覚。父の知らない一面があったのかもしれないという事実に、恐怖すら覚えたといいます。
「とりあえず、相続税の手続きはしておかないといけないので、急遽、専門家に相談しましたが……未だに、父が節約を重ねて貯めた5,000万円なのか、投資かなにかで築いた5,000万円なのか、はたまた人には言えない方法で得た5,000万円なのか、真相はわからないままです」