(※写真はイメージです/PIXTA)
「新築」と「家賃保証」は危険なのか?
田中さんの失敗は、決して特別なケースではありません。「新築ワンルーム」と「サブリース(家賃保証)」という、一見安心に見える組み合わせにこそ、大きな落とし穴が潜んでいます。
第一に、「新築プレミアムの罠」。新築マンションの販売価格には、デベロッパーの利益や広告宣伝費などが2〜3割程度上乗せされているのが一般的です。そのため、一度でも人が住んで中古物件になった瞬間、そのプレミアム分が剥落し、資産価値が大きく下落する傾向にあります。
東日本不動産流通機構の調査でも、首都圏の中古マンションは築年数が経過するごとに価格が下落していくデータが示されており、「新築だから価値が落ちない」というセールストークは極めて危険です。一方で、近年の価格動向は地域やマンションの特性によって異なり、必ずしもすべての物件が下落しているわけではありません。
第二に、「サブリース契約の誤解」です。「家賃保証」という言葉から、契約期間中ずっと同じ賃料が保証されると誤解しがちですが、これは間違いです。サブリース契約は借地借家法が適用されるため、サブリース会社は、近隣相場の変動などを理由にオーナーに対して賃料の減額を請求する権利を持つ場合があります。
国土交通省の賃貸住宅管理業者登録制度による登録を受けているサブリース業者は、オーナーに対し、サブリース契約の締結前に、将来の借上げ家賃の変動に係る条件を書面で交付し、一定の実務経験者等が重要事項として説明することなどが義務付けられています。利用者は契約内容や賃料減額などのリスクを十分理解してから契約することが重要です。
「絶対に損はしない」「手間いらずで安心」といった謳い文句には、こうした構造的なリスクが隠されています。特に老後資金のような失敗の許されない資産を投じる際は、目先の利益や安心感に惑わされず、物件の適正な価値を見極め、契約に潜むリスクを正確に理解することが不可欠です。
[参考資料]
公益財団法人 東日本不動産流通機構『築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2023年)』
消費者庁『サブリース契約に関するトラブルにご注意ください』