脂肪肝の原因と聞くと、多くの人が「アルコールの飲みすぎ」を思い浮かべるかもしれません。しかし、お酒をあまり飲まない人でも脂肪肝になるケースは多く、その原因には身近に潜む成分が関係していると、肥満・脂肪肝の専門医である尾形哲氏はいいます。尾形氏の著書『専門医が教える 肝臓から脂肪を落とす食事術【増補改訂版】』(KADOKAWA)より、40代女性の事例をもとにみていきましょう。
脂肪肝を悪化させる“最悪の組み合わせ”…アルコールと一緒に食べてはいけない「おつまみ」とは【専門医が警鐘】
お酒以外にも要注意
「それから、真理子さん、サプリメントを飲む習慣はありますか?」
「いえ、特に決まったものは……」
「それならよかった。サプリメントや薬は、肝臓で分解されることは知っていますよね?肝臓の大きな働きの1つに、物質の分解処理や解毒があります。薬もサプリメントも、数が増えてしまうと、副作用のリスクが増えるだけでなく、肝臓を傷めてしまうのです。薬の場合、自己判断で減らしてしまっては、体に変調をきたすおそれがありますが、サプリメントはやめても問題がありません。ですから、サプリメントはいったんやめてもらい、肝臓を休ませることをアドバイスしています。肝臓を必要以上にがんばらせないようにすることが大切ですからね」
確かにそうだと納得した。知っておかないといけないことはたくさんあるな。
「もう1つ、身近なのにあまり知られていない、肝臓にとってよくないものがあります。何だと思いますか?」
「えっと、何でしょう。お酒、サプリメント、薬のほかに……?」
私は授業中に急に当てられたときのようにドギマギしてしまった。
「『果糖』って知っていますか? その名前が表すとおり、果物などに含まれる単糖類の一種ですが、果糖による肝障害を引き起こしているのが、『砂糖』と『果糖ぶどう糖液糖』なのです。砂糖は、果糖とブドウ糖が1対1で合わさってできたもの、果糖ぶどう糖液糖は、果糖の割合が50%以上90%未満の、主にとうもろこしから人工的に作られた糖のことです。
果糖ぶどう糖液糖は、砂糖より安く、液体で加工食品に混ぜやすいため、ありとあらゆる加工食品、清涼飲料水に含まれているんです。果糖とブドウ糖の2つの成分のうち、特に果糖が肝臓を傷めつけることが知られています。果糖は、ゆっくり摂ると小腸でブドウ糖に変わるのですが、多量に摂ると処理速度が間に合わず、果糖のまま直接肝臓に向かい、肝細胞が機能不全を起こしてしまうのです」
「そうなんですね……」
ケチャップやドレッシングに始まり、ハムやソーセージ、お菓子や加工食品のほとんどに入っているのだそう。だから加工食品は減らすのが望ましいのだ。
脂肪肝と肝機能改善には、①アルコール、②薬・サプリ、③砂糖・果糖ぶどう糖液糖を減らす!
尾形 哲
長野県佐久市立国保浅間総合病院
外科部長/「スマート外来」担当医