「妻が年上の夫婦」は、いまや決して珍しくありません。女性のほうが平均寿命が長いことを踏まえれば、一見、理想的な組み合わせにも思えます。しかし、その年の差が、夫婦のマネープランに思わぬ「落とし穴」を生むことも。
妻42歳・専業主婦、夫32歳・年収500万円の公務員「年の差婚夫婦」の現実…息子の幼稚園で園長先生から告げられた「残酷なひと言」 (※写真はイメージです/PIXTA)

10歳年下の公務員と再婚したシングルマザー

ユウコさん(仮名/現在42歳)は、シングルマザーでした。前の夫との娘は17歳で来年、大学進学を控えています。

 

最初の結婚で、夫の浪費や借金に苦しんだ経験から、再婚には慎重でした。しかし、アプリで出会った10歳年下のアキトさん(仮名/現在32歳)の朗らかで素直な人柄に惹かれ、交際を開始。年収500万円の公務員という安定性も魅力でした。

 

「バツイチのシングルマザーだから」と、ためらうユウコさんの背中を押したのは、新たな命の存在でした。アキトさんの両親は2人の結婚を祝福してくれませんでしたが、彼の「ユウコさんの娘とこの子を一緒に育てたい。結婚してください」という言葉を受け、再婚を決意。2年前に男の子を出産しました。出産に伴い、仕事は退職し、現在は専業主婦です。

 

幸せな日々を送るなか、2人は手狭になった賃貸アパートからの引っ越しを考えはじめ、マイホーム購入という大きな夢を描くようになりました。

住宅ローン、教育費、老後資金の壁

夫婦が希望したのは、4,800万円の分譲マンション。ユウコさんの貯蓄400万円を頭金にし、残り4,400万円を、夫のアキトさん名義で住宅ローンを組む計画でした。年収を鑑みると背伸びをしたローン計画ですが、住宅メーカーの担当者は「アキトさんは公務員ですし、一度審査に出してみましょう」と背中を押してくれます。

 

ある日、2歳になる下の子のために、評判のよい私立幼稚園の見学説明会に参加しました。

 

園長先生の言葉に、夫婦は耳を疑います。

 

「当園は小学校から大学までの一貫教育を特色としております。そのため、入園されるご家庭には、大学卒業までの20年近い教育費の長期的な計画をお持ちいただくことが、お子様のために不可欠です」

 

配られた資料には、モデルケースとして、大学卒業までにかかる教育費の総額と、その支払い時期が年表で示されていました。

 

その表と、自分たちの4,400万円のローン計画を頭の中で重ね合わせた瞬間、ユウコさんは血の気が引くのを感じました。長女の大学進学費用が、まさに来年から始まります。そのうえで、第二子の莫大な教育費と、巨額の住宅ローンを同時に返済していくことは、計算するまでもなく不可能でした。

 

「私たち、なにもわかっていなかったんだね……」

 

説明会からの帰り道、夫婦は言葉を失っていました。その夜、初めて2人で本気で自分たちの将来の家計について向き合うことになります。

 

銀行から借りられるかどうか、という以前の問題でした。もし、このまま家を買っていたら、どうなっていたか。

 

・目前に迫る高額な教育費:17歳の長女の大学進学が目前に迫っており、今後数年間、家計から貯蓄を生み出す余裕がない。

 

・妻の収入の不確実性:妻のユウコさんは育児に専念するため現在無収入。40代から正規雇用で復職するのは難しく、将来の収入が不確定。

 

・短い「2人で稼げる期間」:夫のアキトさんが働き盛りで収入を増やしていく時期と、妻のユウコさんが復職できたとしても、引退を考える時期が重なってしまう。世帯収入のピークが短く、貯蓄を増やせる期間が限られる。

 

・夫の定年時の、妻の年齢:夫が65歳で定年退職するとき、妻は75歳。介護が始まっている可能性も高く、退職金でローンを完済する計画にもリスクがある。

 

明らかになったのは、「マイホーム」と「子どもたちの十分な教育」は、両立不可能であるという残酷な現実でした。