(※写真はイメージです/PIXTA)
データが示す「年金暮らしの現実」とコミュニケーションの重要性
勘違いで妻を怒鳴りつける……ひどい話かもしれませんが、夫の健司さんの怒りの根底には、「年金だけではやっていけない」という、昨今の高齢者が抱く不安があったのかもしれません。
総務省統計局『家計調査 家計収支編 2024年平均』によると、65歳以上夫婦(ともに無職)のみの世帯における1ヵ月の支出は、平均25万6,521円。一方、収入から保険や税金などを引いた可処分所得は平均月22万2,462円。月3.5万円近い赤字になり、足りない分は貯蓄から取り崩さないといけない……これが平均像です。
――年金で暮らしていけないのに、毎月赤字なのに、贅沢するなんてどういうことだ!
そう怒るのも無理のない話。しかし、今回の夫婦喧嘩の根本的な原因は、お互いの収入や家計の内訳をまったく共有していなかったという、夫婦のコミュニケーションにあったといえるでしょう。株式会社400F/オカネコが行った『結婚に関する意識調査』によると、共働きのお財布事情について、令和婚夫婦の73.0%、平成婚夫婦の51.1%、昭和婚夫婦の45.5%は「お財布は別々(二人の収入から一定の生活費をそれぞれ出し、残りは個別管理)」と回答。それだけ、パートナーがどれほど貯蓄があるのか、どのようにお金を使っているのか、把握しづらいリスクをはらんでいるといえます。「俺の金で!」と健司さんのように勘違いするケースも珍しくないといえるでしょう。
このようなすれ違いを防ぐために重要なのが「家計の見える化」です。スマートフォンの家計簿アプリなどを活用し、お互いがいつでも収支状況を確認できるようにするのもひとつの手。お金の話は、夫婦であってもデリケートで、相手を詮索しているように感じられるかもしれません。しかし、お金の問題は夫婦に思わぬ亀裂を生むもの。お互いを労わり、尊重しながら家計についてオープンに話し合うことこそが、円満な夫婦関係の土台になるといえそうです。
[参考資料]
総務省統計局『家計調査 家計収支編 2024年平均』